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本日のブログは、検査業務の外注と品質責任の関係についてお伝えします。検査業務の外注を検討している製造業の経営者や部門責任者にとって、外注後に不良品が発見された場合の責任の所在は、委託前に整理しておくべき事項です。では、その責任は法律でどのように定められているのでしょうか。
結論からお伝えすると、製品の欠陥によって製品の利用者に被害が生じた場合の責任は、検査を外注しても製造会社が負います。なぜならば、製造物責任法が、製品を製造した会社に賠償責任を定めているからです。一方で、製造会社と受託者の間の責任は、契約形態によって異なります。
請負であれば受託者は契約不適合責任を、準委任であれば善管注意義務を負います。そして、労働者派遣の場合、検査は製造会社が自ら指揮命令を行う業務となります。
本日のブログでは、民法と製造物責任法の定めをもとに、契約形態ごとの責任の違いと、契約書で定めておくべき項目をご説明します。
工程ごとの契約形態の選択については、2026年10月2日のブログ「工程別に見る請負と派遣の選び分け」でお伝えしています。
■ このブログでわかること
- 検査を外注しても、製品の利用者に対する責任は製造会社が負います
- 請負では受託者が契約不適合責任を負い、製造会社は不良品の存在を知った時から1年以内に通知する必要があります
- 製造会社が提供した判定基準や限度見本に起因する不良は、請負でも受託者の責任を追及できません
- 準委任では、受託者が必要な注意を尽くして検査を行ったかどうかが責任の判断基準となります
- 弊社が考える、検査の外注前に契約書で定めておくべき五つの項目
検査の外注でも製品の利用者に対する責任は製造会社が負います
不良品が発見された場合の責任は、相手によって二つに分かれます。一つは製造会社と受託者の間の責任、もう一つは製品の利用者に被害が生じた場合の責任です。
製品の利用者に被害が生じた場合の責任については、製造物責任法に定めがあります。同法第3条によると、製品の欠陥によって人の生命・身体・財産に被害が生じた場合、「製造業者等」が賠償責任を負うとの記載があります。また、同法第2条には、「製造業者等」とは、その製品を業として製造・加工・輸入した者などであるとの記載があります。
検査を外注しても、製品を製造した会社が製造業者等であることに変わりはありません。なので、製品の利用者に対する賠償責任は、検査を外注しても製造会社が負います。
一方で、製造会社と受託者の間の責任は、両社が締結した契約によって決まります。ここからは、契約形態ごとにご説明します。
請負で外注した場合は受託者が契約不適合責任を負います
民法第632条によると、請負は、受託者が仕事の完成を約束し、製造会社がその仕事の結果に対して報酬を支払う契約です。検査の請負では、契約で定めた検査を実施し、合格品と不良品を選別して引き渡すことが、仕事の完成に当たります。
そのため、合格品として引き渡された品の中に不良品があれば、仕事の結果は契約の内容に適合していないことになります。この場合、受託者は契約不適合責任を負います。民法第559条により売買の規定が請負にも準用されるため、製造会社は第562条〜第564条にもとづいて、受託者に次の事項を請求できます。
- 履行の追完(やり直し)
- 報酬の減額(期間を定めてやり直しを請求しても応じない場合)
- 損害賠償
- 契約の解除
ただし、民法第637条により、これらを請求するには、製造会社が不良品の存在を知った時から1年以内に受託者へ通知する必要があります。1年を過ぎると、やり直し、報酬の減額、損害賠償、契約の解除のいずれも請求できなくなります。なお、受託者が引き渡しの時点で不適合を知っていた場合や、重大な過失によって知らなかった場合は、この1年の制限は適用されません。
また、損害賠償の範囲は、民法第416条により、通常生ずべき損害と、当事者が予見すべきであった特別の事情による損害とされています。
この1年の通知期限があるため、弊社は、不良品の存在を知った日を記録し、ただちに受託者の責任者へ書面で通知する手順を社内で定めておくことをおすすめしています。なぜならば、取引先からの指摘を受けて社内で原因を調査している間に、通知が後回しになるおそれがあるからです。
また、不良の原因が製造会社の側にある場合は、請負であっても受託者の責任を追及できません。なぜならば、民法第636条に、製造会社が与えた指図によって生じた不適合については、やり直しや損害賠償などを請求できないとの定めがあるからです。
検査の外注では、製造会社が受託者に提供する判定基準と限度見本が、この「指図」に当たる可能性があります。例えば、判定基準に記載のない種類の不良品が発見された場合や、古い版の限度見本に従って判定した場合です。いずれも、受託者は提供された基準のとおりに検査を行ったことになります。
ただし、受託者が判定基準や限度見本の誤りを知りながら製造会社に告げなかった場合は、受託者の責任を追及できます。
照会の経路と記録
2026年10月2日のブログ「工程別に見る請負と派遣の選び分け」では、判定が難しい品について受託者の責任者から製造会社に照会する経路を設けると、偽装請負と判断されにくくなるとお伝えしました。なぜならば、製造会社の品質管理部門が回答する相手が、検査員ではなく受託者の責任者になるからです。
弊社は、この照会経路が不良の責任の切り分けにも役立つと考えています。照会と回答を記録に残しておけば、不良の原因が製造会社の回答にあるのか、受託者の判定にあるのかを事後に確認できるからです。
! 判定基準を提供する際の注意点
- 判定基準・限度見本は、版と提供日を記録したうえで提供します
- 判定基準を改定した場合は、受託者の責任者に書面で通知し、旧版を回収します
- 判定保留品の照会と回答は、日付とロットを明記して両社で保管します
準委任で外注した場合は受託者が善管注意義務を負います
民法第656条によると、準委任は、受託者が業務の遂行そのものを引き受ける契約です。検査の準委任で受託者が引き受けるのは、検査の結果ではなく、検査業務の遂行です。
そのため、準委任の受託者は、民法第644条により善管注意義務を負います。善管注意義務とは、善良な管理者の注意をもって業務を行う義務のことです。
つまり、不良品が発見された場合に受託者が責任を負うのは、必要な注意を尽くさずに検査を行ったときです。この場合、製造会社は債務不履行として、民法第415条により受託者に損害賠償を請求できます。
また、準委任には、請負のような「知った時から1年以内の通知」の定めはありません。損害賠償を請求できる期間は、民法第166条の消滅時効の定めに従います。
さらに、民法第645条により、受託者は、製造会社から求められた場合にはいつでも業務の状況を報告し、業務の終了後は経過と結果を報告する義務を負います。
報酬については、民法第648条に、業務を行った後に請求できるとの定めがあり、第648条の2には、業務によって得られる成果に対して報酬を支払う約束もできるとの定めがあります。なので、検査数に応じて支払うのか、期間に応じて支払うのかは、契約書で定めておく必要があります。
請負と準委任の違いを整理すると、次のとおりです。
図3のとおり、請負は検査の結果を、準委任は検査業務の遂行を引き受ける契約です。だからこそ弊社は、合否を判定基準で明確に定められる検査かどうかを確認したうえで、契約形態を選択することをおすすめしています。
労働者派遣では検査は製造会社の業務となります
労働者派遣で検査を行う場合は、請負や準委任とは考え方が異なります。労働者派遣法第2条によると、労働者派遣とは、派遣元が雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて派遣先のために労働に従事させることです。つまり、派遣スタッフに検査方法を指揮命令するのは、派遣先である製造会社です。
なので、派遣で検査を行う場合は、判定基準の管理も合否の確認も、製造会社が自社の検査として行うことになります。
契約書に定めのない事項は民法にもとづいて判断されます
ここまでお伝えした内容は、契約書に定めがない場合に民法にもとづいて判断される事項です。請負の1年の通知期限や損害賠償の範囲などは、両社の契約で別に定めることもできます。
ただし、民法第572条により、責任を負わない旨の取り決めをしても、受託者が知りながら告げなかった不良については、受託者は責任を免れません。
検査の外注前に契約書で定めておく五つの項目
ここからは、弊社の見解です。契約書に定めのない事項は民法にもとづいて判断されます。だからこそ弊社は、検査の外注前に、次の五つの項目を契約書で定めておくことをおすすめしています。
- 検査の範囲:対象の工程と検査項目、全数検査か抜取検査かを定めます。弊社は、抜取検査と定めていれば、検査しなかった品の不良について受託者の責任を問うことは難しいと考えています
- 合否の判定:判定基準と限度見本を、版と提供日を明記して提供します
- 判定保留品の照会:判定が難しい品は受託者の責任者から製造会社に照会し、回答を記録します
- 記録と報告:ロットごとの検査数と不良数について、報告の時期と方法を定めます
- 不良品発見時の対応:通知期限、やり直しの方法と費用、損害賠償の範囲と上限を定めます
なお、損害賠償の上限を定める場合も、民法第572条により、受託者が知りながら告げなかった不良についてまで責任を免れる取り決めはできません。
☑ 検査の外注前に定めておく事項
- 請負・準委任・労働者派遣のいずれで外注するか
- 検査の対象工程と検査項目、全数検査か抜取検査か
- 判定基準・限度見本の版と、改定時の通知方法
- 判定保留品の照会経路と記録の保管方法
- 不良品発見時の通知期限、やり直しの方法と費用、賠償の範囲
弊社は検査工程のみの委託にも対応しています
弊社の製造請負業では、組立、機械塗装、検査、倉庫業務を受託しています。契約形態は請負・準委任・労働者派遣からご選択いただけ、検査工程のみのご依頼もお受けしています。
また、一部の業務のみ、特定の期間のみのご依頼もお受けしています。2026年10月16日のブログ「雇用人員判断DIに見る製造業の人手」では、生産量が増加する期間の増加分を外注できるかどうかの判断についてお伝えしました。検査工程も、生産量が増加する期間に限って外注する業務の候補となります。
よくある質問
まとめ
本日のブログでは、検査業務の外注と品質責任の関係についてお伝えしました。製品の欠陥によって製品の利用者に被害が生じた場合の責任は、検査を外注しても製造会社が負います。なぜならば、製造物責任法が、製品を製造した会社に賠償責任を定めているからです。
一方で、製造会社と受託者の間の責任は、契約形態によって異なります。請負であれば、受託者は契約不適合責任を負い、製造会社はやり直し、報酬の減額、損害賠償、契約の解除を請求できます。ただし、不良品の存在を知った時から1年以内の通知が必要であり、製造会社が提供した判定基準や限度見本に起因する不良については、受託者の責任を追及できません。
準委任であれば、受託者は善管注意義務を負い、必要な注意を尽くさずに検査を行った場合に損害賠償責任を負います。そして、労働者派遣の場合、検査は製造会社が自ら指揮命令を行う業務となります。
検査工程の外注をご検討の場合は、製造請負のお問い合わせからご相談ください。
用語解説
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 請負 | 仕事の |
| 準委任 | 法律行為でない |
| 契約不適合責任 | 引き渡した |
| 善管注意義務 | 善良な |
| 債務不履行 | 契約で |
| 製造物責任 | 製品の |
| 判定基準 | 検査で |
| 限度見本 | 合格と |
| 抜取検査 | ロットから |
| 全数 |
すべての |
| 履行の |
修補などに |
出典一覧
- e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第166条・第415条・第416条・第559条・第562条〜第564条・第572条・第632条・第636条・第637条・第644条・第645条・第648条・第648条の2・第656条(2026年10月20日閲覧) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
- e-Gov法令検索「製造物責任法(平成六年法律第八十五号)」第2条・第3条(2026年10月20日閲覧) https://laws.e-gov.go.jp/law/406AC0000000085
- e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)」第2条(2026年10月29日閲覧) https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088














