工程別に見る請負と派遣の選び分け

工程別に見る請負と派遣の選び分け

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「請負」と「労働者派遣」という、製造会社が工程を外部の会社に任せるときに選ぶ二つの契約形態があります。この二つの間には「準委任」もあるため、製造会社の担当者は外注のたびに、三つのうちどれで契約するかを決めることになります。

担当者がこの選択で迷いやすいのは、どの契約形態に当たるかが、契約書の名称ではなく現場の実態で判断されるためです。具体的には、発注者の社員が受託者の作業者へ直接指示を出すかどうかが分かれ目になります。

このブログでは、組立・機械塗装・検査・倉庫業務の四つの工程を例に、それぞれの工程で請負・準委任・派遣のどれが合うかと、偽装請負と判断される線がどこにあるかをご説明します。説明の根拠を厚生労働省の37号告示と疑義応答集に絞るのは、偽装請負かどうかの基準が37号告示に定められ、その当てはめ方を厚生労働省が疑義応答集で示しているからです。

■ このブログでわかること

  • 三つの契約形態は「受託者が何を引き受けるか」と「誰が作業者に指揮命令を出すか」の二つで分かれます
  • 準委任も、請負と同じ37号告示の基準で派遣かどうかを判断されます
  • 組立・塗装・検査・倉庫業務では、偽装請負と判断されやすい場面がそれぞれ異なります
  • 発注者が作業者に直接指示したい工程では、最初から派遣を選ぶのが自然です
  • 発注者が判断を誤ると、派遣労働者に労働契約を申し込んだとみなされることがあります

三つの契約形態の違い

請負・準委任・派遣の違いは、発注者が次の二つの問いに答えると見分けられます。二つの問いに絞るのは、契約の目的を定めた民法の条文が一つ目の点を、偽装請負を判断する37号告示が二つ目の点を見ているためです。

  • 受託者が何を引き受けるのか:仕事の完成か、業務の遂行か、労働力の提供か
  • 誰が作業者に指揮命令を出すのか:受託者か、派遣先か

弊社の事業紹介ページにある三形態の図も、同じ二つの軸で描いています。そのため、このブログの表と図1は、事業紹介ページの図と見比べながら読んでいただけます。二つの軸で三つの契約形態を並べると、次のとおりです。

契約形態 引き受けるもの 指揮命令を出す側
請負 仕事の完成 受託者
準委任 業務の遂行 受託者
労働者派遣 労働力の提供 派遣先
請負仕事の完成を引き受ける民法第632条発注者受託者の管理者作業スタッフ注文指揮命令準委任業務の遂行を引き受ける民法第656条発注者受託者の管理者作業スタッフ注文指揮命令労働者派遣労働力の提供を引き受ける労働者派遣法派遣先派遣元派遣スタッフ指揮命令雇用
図1 三つの契約形態で作業者に指揮命令を出す側の違い。金の矢印が指揮命令の流れ

図1で発注者が見落としやすいのは、請負と準委任では、どちらも受託者が作業者に指揮命令を出すという点です。というのも、準委任は請負と引き受ける対象が違うため、指揮命令の扱いまで違うと受け取られやすいからです。この点について、厚生労働省の「37号告示に関する疑義応答集(第3集)」は次の二つを述べています。

  • 請負と派遣の違いは、発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係が生じない点にあり、委任・準委任も同様であること
  • 準委任契約であっても、実態として発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣事業に当たること

つまり、準委任を選んでも、発注者は請負と同じく作業者へ直接指示を出せません。 なぜなら、請負と準委任の違いは発注者が成果物を定められるかどうかだけであり、派遣との境界は同じ基準で判断されるからです。

✔ ここがポイント

  • 請負と準委任は、受託者が引き受ける対象が違い、指揮命令を出すのはどちらも受託者です
  • 準委任も、37号告示の基準では契約の名称ではなく現場の実態で派遣かどうかを判断されます

請負と派遣を分ける要件

請負・準委任と派遣の境界は、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号、以下「37号告示」)が定めています。37号告示の第2条は、請負の形式で労働者を業務に従事させる事業主であっても、次の二つの要件のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とすると定めています。

要件 中身 37号告示の該当箇所
労働力を自ら直接利用する 業務の遂行方法と評価の管理 第2条第1号イ
同上 始業・終業、休憩、残業・休日労働の管理 第2条第1号ロ
同上 服務規律の管理、配置の決定と変更 第2条第1号ハ
業務を独立して処理する 資金を自ら調達し支弁する 第2条第2号イ
同上 事業主としての法律上の責任を負う 第2条第2号ロ
同上 自ら調達した設備・資材で処理する、または自らの企画・専門的な技術や経験で処理する 第2条第2号ハ
請負・準委任の名目で作業者を業務に就かせる① 労働力を自ら直接利用するイ 業務の遂行方法と評価の管理ロ 始業・終業、休憩、残業・休日の管理ハ 服務規律の管理、配置の決定と変更② 業務を自ら独立して処理するイ 資金を自ら調達し支弁するロ 事業主としての法律上の責任を負うハ 自前の設備・資材、または企画・専門技術受託者が①②をすべて満たす請負・準委任として扱われる要件が一つでも欠ける労働者派遣事業(偽装請負)昭和61年労働省告示第37号 第2条より作成
図2 37号告示第2条の判断の順序。受託者が①②の要件をすべて満たさない限り、労働者派遣事業として扱われます

37号告示は、「発注者が指揮命令をしたら派遣になる」という書き方ではなく、「受託者がすべての要件を満たさない限り派遣とする」という書き方をとっています。そのため、発注者が作業者に直接指示をしていなくても、受託者が設備も資材も用意せず、企画や専門的な技術も持たずに人だけを出している場合には、第2条第2号ハの要件を欠くことになります。

厚生労働省の「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」は、37号告示の要件に〔製造業務の場合〕の具体的な判断基準を添えています。この基準は、製造の現場で受託者が何を自ら決めていれば要件を満たすかを示したもので、主なものは次の四つです。

  • 受託者が一定期間に処理すべき業務の内容や量の注文を受け、必要な労働者数を自ら決め、作業の速度・割り付け・順序を自ら決められること
  • 始業・終業や休憩などを事前に打ち合わせ、業務中は発注者から直接指示を受けないよう書面を作り、受託者側の現場責任者を通じて指示していること
  • 業務量の増加に伴う残業・休日労働は、受託者側の現場責任者が進捗を見て決めていること
  • 原材料や部品の受取り、製品の受渡しを伝票などで処理し、発注者の機械・設備を使う場合は別個の双務契約を結んでいること

! 注意

  • 37号告示は、受託者が要件を「すべて満たした場合だけ」請負と認める書き方です
  • そのため、発注者が直接指示していないことだけでは、適正な請負とはいえません

組立ラインの請負

37号告示の要件を四つの工程に当てはめると、最初に判断が分かれやすいのが組立です。というのも、組立は発注者の工場のライン上で行われることが多く、受託者の作業時間が前後の工程に左右されやすいからです。

中間ラインの受託

厚生労働省の「37号告示に関する疑義応答集」(以下「疑義応答集」)のQ6は、発注者の工場で受託者が中間ラインの一つを請け負う場合を取り上げています。疑義応答集Q6の答えは、受託者が中間ラインを請け負っていることだけで偽装請負になるわけではない、というものです。分かれ目は、受託者がラインの作業時間を自ら決めているかどうかで、次のとおりです。

ラインの状態 疑義応答集Q6の判断
一定期間に処理すべき業務の内容や量の注文に応じて、受託者が作業の速度・割り付け・順番・労働者数を自ら決めている 問題にはならない
処理すべき量があらかじめ決まっておらず、ほかのラインの影響で受託側のラインの作業開始と終了の時刻が実質的に決まってしまう 偽装請負と判断される

たとえば、受託者の作業者が、前工程から半製品が流れてきた分だけ作業し、流れが止まれば待ち、流れが続けば残業する状態では、作業時間を決めているのは受託者ではなく発注者のラインです。そのため、この状態は表の下の行に当たり、偽装請負と判断されます。

作業指示書の渡し方

組立でもう一つ判断が分かれるのは、発注者が受託者に作業指示書を渡す場面です。疑義応答集のQ7によると、発注者が仕事の順序や方法を指示したり、作業者の配置や一人ひとりへの仕事の割付けを決めたりすれば、偽装請負と判断されます。しかも、口頭でなくても、発注者が作業の内容・順序・方法を文書で詳細に示し、そのとおりに作業させている場合も同じ扱いになります。

そのため、発注者が自社の作業標準書をそのまま受託者に渡し、作業者にそのとおり作業させる運用は、偽装請負と判断されるおそれがあります。つまり、「直接言わずに紙で渡せば大丈夫」という理解は、疑義応答集Q7で否定されています。

発注者が偽装請負を避けるには、受託者に示す内容を製品の仕様や品質基準にとどめ、それを満たすための手順や人の割り付けは受託者が決める、という分担を契約と運用の両方でつくる必要があります。なぜなら、契約書で分担を決めても、現場で発注者が手順を指示すれば、Q7のとおり偽装請負と判断されるからです。組立工程の状態ごとに合う契約形態を並べると、次のとおりです。

組立工程の状態 合う契約形態
一定期間の生産数が決まり、受託者が人数と手順を決められる 請負
仕様は決まるが完成品の単位で区切りにくく、作業の遂行を任せる 準委任
前後工程に合わせて発注者が時間と手順を指示する必要がある 派遣

✔ ここがポイント

  • 受託者が中間ラインを請け負うこと自体は、偽装請負になりません
  • 受託側の作業時間が他ラインに決められてしまう状態は、偽装請負と判断されます
  • 発注者が作業手順を文書で詳細に示すことも、作業者への指示に当たります

機械塗装の請負

組立で判断が分かれるのが作業時間と手順だったのに対し、機械塗装で判断が分かれやすいのは、受託者が使う設備と材料です。というのも、塗装ブースや乾燥炉、塗装ロボットのような設備は、多くの場合、発注者の工場にあるからです。

37号告示第2条第2号ハは、受託者が自らの責任と負担で準備した機械・設備・資材で業務を処理するか、自らの企画や専門的な技術・経験で業務を処理するか、どちらかを求めています。そのため、受託者が発注者の設備を使うこと自体は禁止されていませんが、使う場合は設備を貸し借りする取り決めが必要になります。

支給材と設備の契約

疑義応答集のQ14は、受託者が半製品への部品の組込みや塗装、完成品の梱包を請け負う場合を直接扱っています。疑義応答集Q14の考え方は、発注者が支給する材料と、受託者が使う設備とで次のように分かれます。

対象 疑義応答集Q14の考え方
発注者から支給された部品・塗料・梱包材 受託者がいったん「購入」して加工後に「売却」する契約までは必要ない
組込み・塗装・梱包に必要な機械・設備・機材 受託者が自らの責任で準備するか、発注者から借りたり購入したりする場合は別個の双務契約を結ぶ必要がある

厚生労働省の「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」の〔製造業務の場合〕も、発注者の機械・設備を使う場合は別個の双務契約を結び、保守・修理を受託者が行うか、その経費を受託者が負担していることを挙げています。つまり、受託者は塗料の支給を受けてかまいませんが、塗装設備は「借りている」ことを契約で示す必要があります。

色替えの伝え方

塗装の現場では、色替えや仕様変更のたびに、発注者が作業の中身を変えて伝える必要が生じます。発注者がこの変更を誰に伝えればよいかは、疑義応答集の次の二つの問いが扱っています。

  • Q11:請負業務の内容が日常的に変わる場合でも、発注者が作業者に直接変更を指示することは偽装請負に当たり、発注者から受託者に説明・指示する流れなら問題ないとしています
  • Q10:新しい設備を借りて初めて使う場合や新製品の製造に着手する場合に、受託者の監督のもとで、発注者が操作方法や仕様の補足説明をすることは、認められる例として挙げています

☑ 塗装工程の契約前の確認

  • 塗装設備・乾燥設備の使用について、請負契約とは別の契約を結んでいるか
  • 設備の保守・修理を誰が行い、費用を誰が負担するかを契約で決めているか
  • 発注者が色や仕様の変更を、受託者の責任者に伝える経路になっているか
  • 新設備・新製品の説明を、受託者の監督のもとで発注者が行う段取りになっているか

検査工程の請負

受託者が塗装までの工程を担うと、次に判断が分かれるのは、不良品が出たときに発注者が誰へ対応を求めるかです。というのも、検査工程は品質に直結するため、発注者の品質管理部門が受託者の現場に関わりたくなる工程だからです。

不良品の指示先

疑義応答集のQ2は、欠陥製品の原因が受託者の作業工程にあると分かった場合を取り上げています。疑義応答集Q2の答えは、発注者が工程の見直しや再製作を誰に求めるかで、次のように分かれます。

  • 受託者に対して:作業工程の見直しや再製作を求めることは、契約の当事者間の注文であり、偽装請負には当たりません
  • 作業者に直接:工程の変更や再製作を指示した場合は、直接の指揮命令として偽装請負と判断されます

Q2の線引きは、検査工程で毎日起きる合否の判断にもそのまま当てはまります。たとえば、合否の判断に迷う品が出るたびに、発注者の品質担当者が検査員に直接「これは合格」「これは手直し」と指示すると、疑義応答集Q2の考え方に照らして、作業者への直接の指示に近づきます。

そのため、発注者が検査を請負や準委任で任せる場合は、判定基準と限度見本を契約の段階で受託者に渡し、判断に迷う品は受託者の責任者から照会してもらう経路をつくっておく必要があります。この経路があれば、発注者の品質担当者は検査員ではなく、受託者の責任者に答えることになるからです。

一方で、検査基準そのものを発注者が決めることは、請負の性質に反しません。なぜなら、検査基準は「どういう状態の製品を合格とするか」という仕事の完成の定義であり、作業の順序や方法の指示ではないからです。

1人だけの持ち場

発注者が検査を少人数の受託者に任せる場合は、受託者側の責任者の置き方にも注意が必要です。疑義応答集のQ4は、請負の作業場に作業者が1人しかいない場合で、その作業者が管理責任者を兼ねているときは、発注者から管理責任者への注文が、実態として作業者への指揮命令になるため偽装請負と判断されるとしています。

そのため、発注者が少人数の検査ラインを請負で任せるなら、受託者に作業者とは別に責任者を置く体制をとってもらう必要があります。というのも、責任者が作業者と別にいれば、発注者の注文は責任者に向けたものになり、作業者への指揮命令にはならないからです。

! 注意

  • 発注者が不良への対応を検査員や作業者に直接指示すると、偽装請負と判断されます
  • 作業者が1人だけの持ち場では、その作業者が管理責任者を兼ねることはできません

倉庫業務の請負

倉庫業務(入出庫・保管・出荷・搬入)を請け負う場合に判断が分かれやすいのは、次の四つの場面です。倉庫では物量や人の配置が日によって変わるため、そのたびに発注者が受託者の作業者へ直接指示したくなるからです。

  • 日々の物量の変動
  • 発注者の社員との混在
  • 繁忙期の応援
  • 安全衛生のための指示

日々の物量の変動

物量の変動については、疑義応答集のQ8が扱っています。Q8によると、日ごと月ごとに物量の変動が大きくても、発注者が包括的な業務請負契約を結んで毎日必要量を発注し、出来高で精算することだけで偽装請負になるわけではありません。ただし前提として、受託者が発注される量に応じて、作業の順序や緩急、人の配置、労働時間を自ら決めている必要があります。

そのため、発注者は当日の出荷指示を「何を何件、何時までに」という内容で受託者の責任者に渡し、誰がどの棚を担当するかは受託者に決めてもらうやり方が合います。このやり方なら、発注者が渡すのは注文の量と期限だけになり、Q8の前提を満たせるからです。

発注者の社員との混在

発注者の社員と受託者のスタッフが同じ場所で働く場合については、疑義応答集のQ5が扱っています。疑義応答集Q5によると、作業スペースがパーテーションで区切られていないことや、発注者の社員と受託者のスタッフが混在していることだけで偽装請負とされるわけではありません。ただし、作業内容に連続性があり、混在が原因で発注者が受託者のスタッフに必然的に直接指示してしまう場合は、偽装請負と判断されるとしています。

繁忙期の応援

繁忙期には、発注者が自社の社員を受託者の現場へ応援に出したくなる場面があります。疑義応答集のQ3は、注文が多くて受託者だけでは処理できないときに、発注者の社員が受託者の作業場で、受託者の指揮命令のもとで応援する場合を取り上げています。

Q3によると、この場合は発注者が派遣元、受託者が派遣先となる逆向きの労働者派遣に当たり、労働者派遣法に沿っていなければ違法になります。なぜなら、発注者に雇われた社員が、受託者の指揮命令を受けて働くことになるからです。

そのため、応援が必要なときは、発注者と受託者が契約の一部を解除・変更し、その業務を発注者が自ら行う体制に切り替える手続きが必要です。そうすれば、応援に入る発注者の社員は、受託者ではなく発注者の指揮命令のもとで働くことになります。

安全衛生の指示

倉庫ではフォークリフトの通路や荷の落下など、安全に関わる作業が多いため、発注者が受託者の作業者へ安全上の注意を直接伝えたくなる場面があります。発注者がどこまで直接指示してよいかは、厚生労働省の次の二つの資料に書かれています。

  • 疑義応答集(第2集)のQ5:厚生労働省の「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」に収められた資料です。構内に複数の下請事業者が入っている場合に、労働安全衛生法第29条に基づいて元請事業者が下請の作業員に安全衛生上必要な事項を直接指示しても、業務の遂行に関する指示には当たらないとしています
  • 令和7年3月31日付の通達:厚生労働省の「注文者・事業者等が安全衛生上の指示等を行う場合における留意事項」です。安全衛生の確保に必要な範囲の指示であれば直ちに偽装請負とはならず、その範囲を超えて作業の内容や遂行方法を具体的に指示する場合はこの限りでない、としています

✔ ここがポイント

  • 物量が日々変わっても、受託者が人と時間を決めていれば請負は成り立ちます
  • 発注者が自社の社員を受託者の現場に応援に出すと、逆向きの派遣になります
  • 発注者の安全のための指示は、必要な範囲にとどまる限り指揮命令とは扱われません

四つの工程の比較

組立・機械塗装・検査・倉庫業務の四つの工程で、偽装請負と判断されやすい場面と、その根拠になる疑義応答集の問いを並べると、次のようになります。四つを一つの表にするのは、工程ごとに違って見える場面に共通点があるかを見比べるためです。

工程 偽装請負と判断されやすい場面 主な根拠
組立 他ラインに作業時間を決められる/発注者の作業標準書どおりに作業させる 疑義応答集Q6・Q7
機械塗装 発注者の設備を契約なしに使う/色替えを作業者に直接指示する 疑義応答集Q14・Q11
検査 不良品の扱いを作業者に直接指示する/1人の持ち場で責任者を兼ねる 疑義応答集Q2・Q4
倉庫業務 混在による必然的な直接指示/発注者社員の応援 疑義応答集Q5・Q3

表を見比べると、どの工程でも、発注者から作業者へ直接指示が届く経路ができるかどうかが分かれ目になっています。つまり、工程の種類そのもので、請負に向くか派遣に向くかが決まっているわけではありません。

そのため、同じ組立でも、発注者が現場でどこまで手順を決めたいかによって、合う契約形態は変わります。たとえば、次の二つの場合です。

  • 受託者が人と時間を決められるように契約を組むなら、請負が成り立ちます
  • 発注者がその日のラインの都合で手順を決めたいなら、派遣が合います
請負として適正な経路発注者受託者の責任者作業スタッフ注文・仕様変更不良の照会作業の指示偽装請負と判断される経路発注者作業スタッフ受託者の責任者(通らない)発注者から作業者へ直接の指示手順・配置・不良の扱いなど安全衛生上必要な範囲の指示は、直ちに偽装請負とはなりません(厚生労働省 令和7年3月31日付通達)
図3 発注者の指示が受託者の責任者を通るか、作業者へ直接届くかの違い(疑義応答集Q2・Q7・Q11などをもとに作成)

発注者が契約形態を選ぶときは、「この工程には何が適しているか」ではなく、「この工程で、発注者は作業者に直接指示を出す必要があるか」という問いから始めると、判断がぶれにくくなります。というのも、この問いへの答えが、表の四つの工程すべてに共通する分かれ目そのものだからです。

この工程で、発注者は作業者に直接指示を出す必要があるかはいいいえ労働者派遣派遣先が指揮命令する期間制限:事業所単位・個人単位 原則3年仕事の完成の単位(成果物)を定められるかはいいいえ請負仕事の完成を引き受ける準委任業務の遂行を引き受けるどちらも、発注者の指示は受託者の責任者を通します
図4 発注者が契約形態を選ぶ順序。最初の問いで派遣かどうか、次の問いで請負か準委任かが決まります

派遣が合う工程

発注者が図4の最初の問いに「出す必要がある」と答える工程では、最初から労働者派遣を選ぶのが自然です。 なぜなら、労働者派遣は派遣先が派遣スタッフに指揮命令することを前提にした契約形態であり、直接の指示が違法になる請負・準委任とは前提が逆だからです。

たとえば、立ち上げ直後で手順が毎日変わるラインや、発注者の社員と一体で作業する持ち場を発注者が無理に請負にすると、契約は請負、現場は派遣という状態になりやすくなります。というのも、こうした持ち場では、発注者がその日の手順を作業者に直接伝えることになるからです。

ただし、派遣先になる発注者は、労働者派遣法の期間制限を守る必要があります。厚生労働省の「平成27年労働者派遣法改正法の概要」によると、期間制限は次の二つです。

  • 事業所単位:派遣先の同一の事業所に派遣できる期間は原則3年が限度で、3年を超えて受け入れるには派遣先の過半数労働組合などから意見を聴く必要があります
  • 個人単位:同一の派遣労働者を派遣先の同一の組織単位に派遣できる期間も、3年が限度です

一方で、請負と準委任にはこの期間制限がありません。期間制限は、労働者派遣法が派遣について定めた決まりだからです。そのため、発注者は工程の状態に応じて、次のように使い分けることができます。

工程の状態 向く契約形態
長く続く定常的な工程で、受託者が人と手順を決められる 請負・準委任
立ち上げ期や、発注者の直接指示が欠かせない工程 派遣

■ この章のまとめ

  • 発注者が作業者に直接指示する必要がある工程は、派遣が前提に合います
  • 派遣先になる発注者には、事業所単位と個人単位の二つの期間制限があります
  • 長く続き、受託者が人と手順を決められる工程は、請負・準委任に向きます

偽装請負になったときの代償

厚生労働省の「労働契約申込みみなし制度について」(資料3)によると、労働者派遣法第40条の6により、派遣先が違法派遣を受け入れた時点で、派遣先は派遣労働者に対し、派遣元での労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだものとみなされます。対象となる違法派遣の類型は、次のとおりです。

  • 禁止業務への従事
  • 無許可の事業主からの受入れ
  • 事業所単位の期間制限違反
  • 個人単位の期間制限違反
  • いわゆる偽装請負等

ここでいう偽装請負等は、労働者派遣法などの適用を免れる目的で、請負その他の名目で契約を結び、必要な事項を定めずに労働者派遣を受けることを指します。つまり、契約の名目が請負や準委任であっても、現場の実態が派遣であれば、発注者はこの制度の対象になり得ます。

派遣先が違法派遣に当たることを知らず、知らなかったことに過失もなかった場合は、この制度は適用されません。ただし、厚生労働省の「労働契約申込みみなし制度について」(資料1-1)は、この判断を違法行為が行われた日ごとに行う考え方をとっています。つまり、発注者が偽装請負の状態を知った後も同じ運用を続けると、その翌就業日以降は「知らなかった」とは主張しにくくなります。

そのため、発注者は契約を結んだ後も、受託者の現場で直接指示が出ていないかを定期的に点検する必要があります。というのも、担当者の交代や生産計画の変更のあとは、発注者側の社員が以前の取り決めを知らないまま、受託者のスタッフに直接指示を出してしまうことがあるからです。

! 注意

  • 偽装請負等は、労働契約申込みみなし制度の対象です
  • 発注者が偽装請負の状態に気づいた後も運用を続けると、善意無過失は主張しにくくなります

発注前の確認項目

四つの工程で見てきた判断を、発注者が外注を発注する前に確かめる項目にまとめると、次の九つになります。発注者が外注したい工程に一つずつ当てはめると、どの契約形態が合うかと、請負・準委任にする場合に契約書へ何を書くべきかが分かります。

☑ 発注前の確認項目

  • この工程で、発注者が作業者に直接指示を出す必要があるか
  • 一定期間に処理する量や内容を、発注者が受託者に注文として渡せるか
  • 作業の順序・割り付け・人数を、受託者が自ら決められるか
  • 発注者が渡す作業手順書は、仕様や品質基準にとどまっているか
  • 発注者の設備を使う場合、別個の契約と保守・修理の分担を決めているか
  • 仕様変更や不良への対応を、受託者の責任者を通じて伝える経路になっているか
  • 受託者が、作業者とは別に責任者を置けるか
  • 発注者の社員が受託者の現場に応援に入る運用になっていないか
  • 派遣にする場合、発注者が事業所単位と個人単位の期間制限の起算日を管理できるか

発注者が確認項目に答えると、検討する契約形態は次のように分かれます。最初の項目で派遣かどうかが決まり、二つ目から七つ目で請負・準委任の要件を満たせるかが分かるためです。

確認項目の答え 検討する契約形態
最初の一つに「はい」と答える 派遣を中心に検討するのが自然です
二つ目から七つ目までをすべて満たせる 請負または準委任で任せられます
どちらとも言い切れない 受け入れ体制を整えるまで派遣で始め、手順が固まった段階で請負に切り替えるという順序もあります

派遣から請負に切り替える場合は、発注者が契約を切り替える日を境に、作業者への指示の経路も切り替える必要があります。なぜなら、契約だけを請負に切り替えても、発注者の社員が作業者へ直接指示を続ければ、疑義応答集のとおり偽装請負と判断されるからです。

弊社は、組立、機械塗装、検査、倉庫業務の受託を行っており、契約形態は請負、準委任、労働者派遣から選んでいただけます。受託の単位は業務ごとに定め、一部の業務のみや特定期間のみの受託にも対応しています。工程ごとにどの契約形態が合うかのご相談は、製造請負のお問い合わせからお寄せください。

よくある質問

Q準委任にすれば、発注者が作業者に指示を出してもよいですか?

A準委任契約であっても、実態として発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係があれば、労働者派遣事業に当たります。というのも、厚生労働省の疑義応答集(第3集)が、準委任も請負と同じく、契約の形式を問わず実態で判断するとしているからです。そのため、準委任でも発注者は作業者へ直接指示を出さず、受託者の責任者を通じて伝えます。

Q作業手順を口頭でなく文書で渡せば問題になりませんか?

A文書で渡しても問題になります。なぜなら、疑義応答集Q7は、発注者が作業の内容・順序・方法を文書で詳細に示し、そのとおりに作業させている場合も偽装請負と判断しているからです。そのため、発注者が受託者に示すのは、製品の仕様や品質基準にとどめます。

Q発注者の塗装設備を受託者が使ってもよいですか?

A使うこと自体は禁止されていませんが、受託者は発注者と別個の双務契約を結び、保守・修理の分担を決めておく必要があります。なぜなら、37号告示第2条第2号ハと疑義応答集Q14が、受託者が設備を自ら準備するか、発注者から借りるなら別個の双務契約を結ぶことを求めているからです。一方で、塗料などの材料は、疑義応答集Q14のとおり発注者からの支給でかまいません。

Q検査基準を発注者が決めるのは問題ですか?

A発注者が検査基準を決めることは、請負の性質に反しません。なぜなら、検査基準は「どういう状態の製品を合格とするか」という仕事の完成の定義であり、作業の順序や方法の指示ではないからです。ただし、発注者が不良品への対応を検査員に直接指示すると、疑義応答集Q2のとおり偽装請負と判断されます。

Q繁忙期に発注者の社員が受託者の現場を手伝ってもよいですか?

A発注者の社員が受託者の指揮命令のもとで応援すると、逆向きの労働者派遣に当たります。なぜなら、疑義応答集Q3のとおり、発注者が派遣元、受託者が派遣先となるからです。そのため、応援が必要なときは、契約の一部を解除・変更し、その業務を発注者が自ら行う体制に切り替えます。

まとめ

このブログでは、製造会社が工程を外注するときに請負・準委任・労働者派遣のどれを選ぶかを、組立・機械塗装・検査・倉庫業務の四つの工程に当てはめてご説明しました。工程ごとに見たのは、厚生労働省の疑義応答集が、中間ライン・塗装・欠陥製品・物量の変動といった工程の場面ごとに判断を示しているからです。そのうえで四つの工程を見比べると、論点は工程ごとに異なりますが、どの工程でも発注者から作業者へ直接指示が届くかどうかが分かれ目になっていました。

■ このブログの要点

  • 三つの契約形態は、「受託者が何を引き受けるか」と「誰が作業者に指揮命令を出すか」で分かれます
  • 準委任も、請負と同じ37号告示の基準で判断されます
  • 分かれ目は、発注者から作業者へ直接指示が届く経路ができるかどうかです
  • 発注者の直接の指示が欠かせない工程は、派遣を選びます
  • 受託者が人と手順を決められる工程は、成果物を定められるかどうかで請負か準委任かを決めます

☑ 次にすること

  • 発注者が外注を検討している工程に、「発注前の確認項目」を一つずつ当てはめます
  • 最初の問いに「はい」と答えるかどうかで、派遣から検討するか、請負・準委任から検討するかを決めます

外注を検討している工程があれば、まず「発注前の確認項目」を一つずつ当てはめてみてください。最初の項目に答えるだけでも、その工程を派遣から検討するか、請負・準委任で任せられるかの出発点が決まるからです。

用語解説

用語 意味
請負 仕事の完成を目的とする契約(民法第632条)。作業者への指揮命令は受託者が行う
準委任 法律行為でない事務の処理を委ねる契約(民法第656条)。作業者への指揮命令は受託者が行う
労働者派遣 派遣元が雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて派遣先のために働かせること
37号告示 「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」。請負か派遣かを現場の実態で判断する基準
疑義応答集 37号告示を現場にどう当てはめるかを、厚生労働省がQ&A形式で示した資料。第1集から第3集まである
偽装請負 契約は請負や準委任でも、実態が労働者派遣に当たる状態
双務契約 当事者の双方が義務を負う契約。受託者が発注者の設備を借りる賃貸借契約など
管理責任者 受託者側で、作業の指示、作業者の管理、発注者との交渉を担う者
期間制限 派遣先が派遣を受け入れられる期間の上限。事業所単位と個人単位があり、いずれも原則3年
労働契約申込みみなし制度 違法派遣を受け入れた派遣先が、派遣労働者に労働契約を申し込んだとみなされる制度(労働者派遣法第40条の6)

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