工程別に見る請負と派遣の選び分け

工程別に見る請負と派遣の選び分け

この記事の概要|読了目安:約15分

製造工程を外注するとき、請負と派遣のどちらを選ぶか、あるいは準委任にするかは、契約書の名称ではなく現場の動かし方で決まります。この記事では、組立・機械塗装・検査・倉庫業務の四つの工程を例に、それぞれの形態が合う場面と、偽装請負と判断される線がどこにあるのかを、厚生労働省の37号告示と疑義応答集に沿って示します。

■ この記事でわかること

  • 三つの形態は「引き受ける対象」と「指揮命令の出どころ」の二つで分かれます
  • 準委任も、請負と同じ37号告示の基準で判断されます
  • 組立・塗装・検査・倉庫業務では、判断が分かれる場面がそれぞれ異なります
  • 発注者が作業者に直接指示したい工程は、最初から派遣を選ぶほうが筋が通ります
  • 判断を誤ると、発注者が労働契約を申し込んだとみなされることがあります

二つの軸と三つの形態

請負・準委任・派遣の違いは、二つの問いで整理できます。一つは、受託者が何を引き受けるのかという問いです。もう一つは、作業するスタッフへの指揮命令がどこから出るのかという問いです。

株式会社永光の事業紹介ページにある三形態の図も、この二つの軸で描いています。請負は仕事の完成を、準委任は業務の遂行を、労働者派遣は労働力の提供を引き受けます。そして、請負と準委任では指揮命令は受託者から出ますが、労働者派遣では派遣先から出ます。

請負仕事の完成を引き受ける民法第632条発注者受託者の管理者作業スタッフ注文指揮命令準委任業務の遂行を引き受ける民法第656条発注者受託者の管理者作業スタッフ注文指揮命令労働者派遣労働力の提供を引き受ける労働者派遣法派遣先派遣元派遣スタッフ指揮命令雇用
図1 三つの形態の違い。金の矢印が指揮命令の流れ

この図で見落とされやすいのは、請負と準委任の「指揮命令の出どころ」が同じだという点です。厚生労働省の「37号告示に関する疑義応答集(第3集)」は、請負と派遣の違いは発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係が生じない点にあり、委任・準委任も同様であると述べています。そのうえで、準委任契約であっても、実態として発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣事業に当たるとしています。

つまり、準委任は「請負より緩い契約」ではなく、指揮命令について請負と同じ線を守る契約です。 請負と準委任のどちらにするかは、成果物を定められるかどうかで決まり、派遣との境界の考え方は変わりません。

✔ ここがポイント

  • 請負と準委任は、引き受ける対象が違い、指揮命令の出どころは同じです
  • 準委任も、契約の名称ではなく実態で派遣かどうかが判断されます

請負と派遣の境界線

その境界を定めているのが、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号、以下「37号告示」)です。37号告示の第2条は、請負の形式で労働者を業務に従事させる事業主であっても、次の二つの要件のいずれにも該当しない限り、労働者派遣事業を行う事業主とすると定めています。

要件 中身 37号告示の該当箇所
労働力を自ら直接利用する 業務の遂行方法と評価の管理 第2条第1号イ
同上 始業・終業、休憩、残業・休日労働の管理 第2条第1号ロ
同上 服務規律の管理、配置の決定と変更 第2条第1号ハ
業務を独立して処理する 資金を自ら調達し支弁する 第2条第2号イ
同上 事業主としての法律上の責任を負う 第2条第2号ロ
同上 自ら調達した設備・資材で処理する、または自らの企画・専門的な技術や経験で処理する 第2条第2号ハ
請負・準委任の形で人を業務に就かせる① 労働力を自ら直接利用するイ 業務の遂行方法と評価の管理ロ 始業・終業、休憩、残業・休日の管理ハ 服務規律の管理、配置の決定と変更② 業務を自ら独立して処理するイ 資金を自ら調達し支弁するロ 事業主としての法律上の責任を負うハ 自前の設備・資材、または企画・専門技術①②の要件をすべて満たす請負・準委任として扱われる一つでも欠ける労働者派遣事業(偽装請負)昭和61年労働省告示第37号 第2条より作成
図2 37号告示第2条の考え方。①②のすべてを満たさない限り、労働者派遣事業として扱われます

37号告示は「指揮命令をしたら派遣になる」という形ではなく、「すべての要件を満たさない限り派遣とする」という形をとっています。そのため、発注者が作業者に直接指示をしていなくても、たとえば受託者が設備も資材も用意せず、企画や専門的な技術も持たずに人だけを出している場合には、要件を欠くことになります。

厚生労働省の「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」は、この要件に〔製造業務の場合〕の具体的な判断基準を添えています。主なものは次の四つです。

  • 受託者が一定期間に処理すべき業務の内容や量の注文を受け、必要な労働者数を自ら決め、作業の速度・割り付け・順序を自ら決められること
  • 始業・終業や休憩などを事前に打ち合わせ、業務中は発注者から直接指示を受けないよう書面を作り、受託者側の現場責任者を通じて指示していること
  • 業務量の増加に伴う残業・休日労働は、受託者側の現場責任者が進捗を見て決めていること
  • 原材料や部品の受取り、製品の受渡しを伝票などで処理し、発注者の機械・設備を使う場合は別個の双務契約を結んでいること

! 注意

  • 37号告示は、要件を「すべて満たした場合だけ」請負と認める書き方です
  • 発注者が直接指示していないことだけでは、適正な請負とはいえません

組立工程の判断

37号告示の要件を工程に当てはめると、最初に判断が分かれやすいのが組立です。組立は発注者の工場のライン上で行われることが多く、前後の工程と時間的につながっているためです。

厚生労働省の「37号告示に関する疑義応答集」(以下「疑義応答集」)のQ6は、発注者の工場で中間ラインの一つを請け負う場合を取り上げています。疑義応答集Q6の答えは、中間ラインを請け負っていることだけで偽装請負になるわけではない、というものです。一定期間に処理すべき業務の内容や量の注文に応じて、受託者が作業の速度・割り付け・順番・労働者数を自ら決めているのであれば、問題にはなりません。

一方で、疑義応答集Q6は、処理すべき量があらかじめ決まっておらず、ほかのラインの影響で受託側のラインの作業開始と終了の時刻が実質的に決まってしまう場合は、偽装請負と判断されるとしています。たとえば、前工程から半製品が流れてきた分だけ作業し、流れが止まれば待ち、流れが続けば残業になるという状態では、作業時間を決めているのは受託者ではなく発注者のラインです。

もう一つの論点は、作業指示書です。疑義応答集のQ7によると、発注者が仕事の順序や方法を指示したり、作業者の配置や一人ひとりへの仕事の割付けを決めたりすれば、偽装請負と判断されます。しかも、口頭でなくても、発注者が作業の内容・順序・方法を文書で詳細に示し、そのとおりに作業させている場合も同じ扱いになります。

発注者が自社の作業標準書をそのまま渡す運用は、この点で問題になります。「直接言わずに紙で渡せば大丈夫」という理解は、疑義応答集Q7で明確に否定されています。 発注者が示すのは製品の仕様や品質基準にとどめ、それを満たすための手順や人の割り付けは受託者が決める、という分担を契約と運用の両方でつくる必要があります。

組立工程の状態 合う形態
一定期間の生産数が決まり、受託者が人数と手順を決められる 請負
仕様は決まるが完成品の単位で区切りにくく、作業の遂行を任せる 準委任
前後工程に合わせて発注者が時間と手順を指示する必要がある 派遣

✔ ここがポイント

  • 中間ラインの受託そのものは問題になりません
  • 作業時間が他ラインに決められてしまう状態は、偽装請負と判断されます
  • 発注者が作業手順を文書で詳細に示すことも、指示に当たります

機械塗装の判断

組立が「時間と手順」の問題だとすれば、機械塗装で判断が分かれやすいのは設備と材料です。塗装ブースや乾燥炉、塗装ロボットのような設備は、多くの場合、発注者の工場にあります。

37号告示第2条第2号ハは、受託者が自らの責任と負担で準備した機械・設備・資材で業務を処理するか、自らの企画や専門的な技術・経験で業務を処理するか、どちらかを求めています。そのため、発注者の設備を使うこと自体は禁止されていませんが、使い方の取り決めが必要になります。

疑義応答集のQ14は、半製品への部品の組込みや塗装、完成品の梱包を請け負う場合を直接扱っています。疑義応答集Q14によると、発注者から支給された部品や塗料、梱包材を、受託者がいったん「購入」して加工後に「売却」する契約までは必要ありません。ただし、組込み・塗装・梱包に必要な機械・設備・機材は、受託者が自らの責任で準備するか、発注者から借りたり購入したりする場合は別個の双務契約を結ぶ必要があるとしています。

厚生労働省の「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」の〔製造業務の場合〕も、発注者の機械・設備を使う場合は別個の双務契約を結び、保守・修理を受託者が行うか、その経費を受託者が負担していることを挙げています。つまり、塗料は支給でかまいませんが、塗装設備は「借りている」状態を契約で示す必要があります。

塗装で次に起きやすいのは、色替えや仕様変更です。疑義応答集のQ11は、請負業務の内容が日常的に変わる場合でも、発注者が作業者に直接変更を指示することは偽装請負に当たり、発注者から受託者に説明・指示する形なら問題ないとしています。また、疑義応答集のQ10は、新しい設備を借りて初めて使う場合や新製品の製造に着手する場合に、受託者の監督のもとで、発注者が操作方法や仕様の補足説明をすることは認められる例として挙げています。

☑ 塗装工程で確認したいこと

  • 塗装設備・乾燥設備の使用について、請負契約とは別の契約があるか
  • 設備の保守・修理を誰が行い、費用を誰が負担するか
  • 色や仕様の変更は、発注者から受託者の責任者に伝わる経路になっているか
  • 新設備・新製品の説明は、受託者の監督のもとで行う段取りになっているか

検査工程の判断

塗装までの工程を受託者が担うと、次に問題になるのが不良品が出たときの対応です。検査工程は品質に直結するため、発注者の品質管理部門が現場に関わりたくなる工程でもあります。

疑義応答集のQ2は、欠陥製品の原因が受託者の作業工程にあると分かった場合を取り上げています。疑義応答集Q2の答えでは、発注者が受託者に対して作業工程の見直しや再製作を求めることは、契約の当事者間の注文であり偽装請負には当たりません。しかし、発注者が作業者に直接工程の変更や再製作を指示した場合は、直接の指揮命令として偽装請負と判断されます。

この線は、検査工程の日常にそのまま当てはまります。たとえば、合否の判断に迷う品が出るたびに、発注者の品質担当者が検査員に直接「これは合格」「これは手直し」と指示する運用は、疑義応答集Q2の考え方に照らすと、作業者への直接の指示に近づきます。検査を請負や準委任で任せる場合は、判定基準と限度見本を契約の段階で受託者に渡し、判断に迷う品は受託者の責任者を通じて発注者に照会する経路をつくることが前提になります。

一方で、検査基準そのものを発注者が決めることは、請負の性質に反しません。なぜなら、検査基準は「どういう状態の製品を合格とするか」という仕事の完成の定義であり、作業の順序や方法の指示ではないからです。

検査工程では、作業者が少人数になりやすい点にも注意が必要です。疑義応答集のQ4は、請負の作業場に作業者が1人しかいない場合で、その作業者が管理責任者を兼ねているときは、発注者から管理責任者への注文が、実態として作業者への指揮命令になるため偽装請負と判断されるとしています。少人数の検査ラインを請負で任せるなら、作業者とは別に責任者を置く体制が必要です。

! 注意

  • 不良への対応を、発注者が検査員や作業者に直接指示すると偽装請負と判断されます
  • 作業者が1人だけの持ち場では、その人が管理責任者を兼ねることはできません

倉庫業務の判断

倉庫業務(入出庫・保管・出荷・搬入)で判断が分かれやすいのは、日々の物量の変動と、発注者の社員との混在です。

物量の変動については、疑義応答集のQ8が考え方を示しています。日ごと月ごとに変動が大きい場合でも、包括的な業務請負契約を結んで毎日必要量を発注し、出来高で精算することだけで偽装請負になるわけではありません。前提は、発注される量に応じて、受託者が作業の順序や緩急、人の配置、労働時間を自ら決めていることです。そのため、当日の出荷指示は「何を何件、何時までに」という形で受託者の責任者に渡し、誰がどの棚を担当するかは受託者が決める形が合います。

混在については、疑義応答集のQ5があります。疑義応答集Q5によると、作業スペースがパーテーションで区切られていないことや、発注者の社員と受託者のスタッフが混在していることだけで偽装請負とされるわけではありません。ただし、作業内容に連続性があり、混在が原因で発注者が受託者のスタッフに必然的に直接指示してしまう場合は、偽装請負と判断されるとしています。

繁忙期の応援にも落とし穴があります。疑義応答集のQ3は、注文が多くて受託者だけでは処理できないときに、発注者の社員が受託者の作業場で、受託者の指揮命令のもとで応援する場合を取り上げています。この場合は、発注者が派遣元、受託者が派遣先となる逆向きの労働者派遣に当たり、労働者派遣法に沿っていなければ違法になります。応援が必要なときは、契約の一部を解除・変更し、その業務を発注者が自ら行う形に切り替える手続きが必要です。

また、倉庫ではフォークリフトの通路や荷の落下など、安全に関わる場面が多くあります。厚生労働省の「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」に収められた疑義応答集(第2集)のQ5は、構内に複数の下請事業者が入っている場合に、労働安全衛生法第29条に基づいて元請事業者が下請の作業員に安全衛生上必要な事項を直接指示しても、業務の遂行に関する指示には当たらないとしています。さらに、厚生労働省の令和7年3月31日付の通達「注文者・事業者等が安全衛生上の指示等を行う場合における留意事項」は、安全衛生の確保に必要な範囲の指示であれば直ちに偽装請負とはならず、その範囲を超えて作業の内容や遂行方法を具体的に指示する場合はこの限りでない、と整理しています。

✔ ここがポイント

  • 物量が日々変わっても、受託者が人と時間を決めていれば請負は成り立ちます
  • 発注者の社員を受託者の現場に応援に出すと、逆向きの派遣になります
  • 安全のための指示は、必要な範囲にとどまる限り指揮命令とは扱われません

工程ごとの分かれ目

ここまでの四つの工程を並べると、判断が分かれる場面と、その根拠になる資料は次のようになります。

工程 判断が分かれる場面 主な根拠
組立 他ラインに作業時間を決められる/発注者の作業標準書どおりに作業させる 疑義応答集Q6・Q7
機械塗装 発注者の設備を契約なしに使う/色替えを作業者に直接指示する 疑義応答集Q14・Q11
検査 不良品の扱いを作業者に直接指示する/1人の持ち場で責任者を兼ねる 疑義応答集Q2・Q4
倉庫業務 混在による必然的な直接指示/発注者社員の応援 疑義応答集Q5・Q3

この表から読み取れるのは、どの工程でも「発注者から作業者へ、直接」という経路が生じる場面が分かれ目になっているということです。工程の種類そのものが請負に向く、派遣に向くと決まっているわけではありません。同じ組立でも、受託者が人と時間を決められる契約の組み方なら請負が成り立ち、発注者がその日のラインの都合で手順を決めたいなら派遣が合います。

適正な経路発注者受託者の責任者作業スタッフ注文・仕様変更不良の照会作業の指示偽装請負と判断される経路発注者作業スタッフ受託者の責任者(通さない)発注者から作業者へ直接の指示手順・配置・不良の扱いなど安全衛生上必要な範囲の指示は、直ちに偽装請負とはなりません(厚生労働省 令和7年3月31日付通達)
図3 分かれ目は「発注者から作業者へ、直接」の経路が生じるかどうか(疑義応答集Q2・Q7・Q11などをもとに作成)

そのため、選び分けは「この工程は何が適しているか」ではなく、「この工程で、発注者は作業者に直接指示を出す必要があるか」という問いから始めると、判断がぶれにくくなります。

この工程で、発注者は作業者に直接指示を出す必要があるかはいいいえ労働者派遣派遣先が指揮命令する期間制限:事業所単位・個人単位 原則3年仕事の完成の単位(成果物)を定められるかはいいいえ請負仕事の完成を引き受ける準委任業務の遂行を引き受けるどちらも、指示は受託者の責任者を通します
図4 選び分けの順序。最初の問いで派遣かどうか、次の問いで請負か準委任かが決まります

派遣を選ぶ場面

この問いに「出す必要がある」と答える工程では、最初から労働者派遣を選ぶほうが筋が通ります。なぜなら、労働者派遣は派遣先が派遣スタッフに指揮命令することを前提にした形態であり、直接の指示が違法になる請負・準委任とは前提が逆だからです。

たとえば、立ち上げ直後で手順が毎日変わるラインや、発注者の社員と一体で作業する持ち場を無理に請負にすると、契約は請負、現場は派遣という状態になりやすくなります。

ただし、派遣には派遣の決まりがあります。厚生労働省の「平成27年労働者派遣法改正法の概要」によると、派遣先の同一の事業所に派遣できる期間は原則3年が限度で、3年を超えて受け入れるには派遣先の過半数労働組合などから意見を聴く必要があります。また、同一の派遣労働者を派遣先の同一の組織単位に派遣できる期間も、3年が限度です。

一方で、請負と準委任にはこの期間制限がありません。そのため、長く続く定常的な工程で、受託者が人と手順を決められるものは請負や準委任に向き、立ち上げ期や発注者の直接指示が欠かせない工程は派遣に向く、という使い分けが考えられます。

■ この章のまとめ

  • 発注者が作業者に直接指示する必要がある工程は、派遣が前提に合います
  • 派遣には、事業所単位と個人単位の二つの期間制限があります
  • 定常的で、受託者が人と手順を決められる工程は、請負・準委任に向きます

判断を誤ったときの代償

厚生労働省の「労働契約申込みみなし制度について」(資料3)によると、労働者派遣法第40条の6により、派遣先が違法派遣を受け入れた時点で、派遣先は派遣労働者に対し、派遣元での労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだものとみなされます。対象となる違法派遣の類型には、禁止業務への従事、無許可の事業主からの受入れ、事業所単位と個人単位の期間制限違反に加えて、いわゆる偽装請負等が含まれています。

ここでいう偽装請負等は、労働者派遣法などの適用を免れる目的で、請負その他の名目で契約を結び、必要な事項を定めずに労働者派遣を受けることを指します。違法派遣に当たることを知らず、知らなかったことに過失もなかった場合は適用されませんが、厚生労働省の「労働契約申込みみなし制度について」(資料1-1)は、この判断を違法行為が行われた日ごとに行う考え方を示しています。つまり、偽装請負の状態を知った後も同じ運用を続けると、その翌就業日以降は「知らなかった」とは主張しにくくなります。

そのため、契約後も現場の運用を定期的に点検することに意味があります。担当者の交代や生産計画の変更のあとは、発注者側の社員が以前の取り決めを知らないまま、受託者のスタッフに直接指示を出してしまうことがあるからです。

! 注意

  • 偽装請負等は、労働契約申込みみなし制度の対象です
  • 偽装請負の状態に気づいた後も運用を続けると、善意無過失は主張しにくくなります

発注前の確認項目

これまでの内容を、外注を発注する前の確認項目にまとめると次のようになります。工程ごとに一つずつ当てはめると、どの形態が合うかと、請負・準委任にする場合に何を契約に書くべきかが見えてきます。

☑ 発注前の確認項目

  • この工程で、発注者が作業者に直接指示を出す必要があるか
  • 一定期間に処理する量や内容を、受託者に注文の形で渡せるか
  • 作業の順序・割り付け・人数を、受託者が自ら決められるか
  • 作業手順書は、発注者の仕様や品質基準にとどまっているか
  • 発注者の設備を使う場合、別個の契約と保守・修理の分担を決めているか
  • 仕様変更や不良への対応は、受託者の責任者を通じる経路になっているか
  • 作業者とは別に、受託者側の責任者を置けるか
  • 発注者の社員が受託者の現場に応援に入る運用になっていないか
  • 派遣にする場合、事業所単位と個人単位の期間制限の起算日を管理できるか

確認項目の最初の一つに「はい」と答える工程は、派遣を中心に検討するのが自然です。逆に、二つ目から七つ目までをすべて満たせる工程は、請負または準委任で任せられます。どちらとも言い切れない工程は、受け入れ体制を整えるまで派遣で始め、手順が固まった段階で請負に切り替えるという順序もあります。その場合は、契約を切り替える日を境に、発注者からの指示の経路も切り替える必要があります。

株式会社永光は、組立、機械塗装、検査、倉庫業務の受託を行っており、契約形態は請負、準委任、労働者派遣から選んでいただけます。受託の単位は業務ごとに定め、一部の業務のみや特定期間のみの受託にも対応しています。工程ごとにどの形態が合うかのご相談は、製造請負のお問い合わせからお寄せください。

まとめ

この記事では、製造工程を外注するときに請負・準委任・労働者派遣のどれを選ぶかを、組立・機械塗装・検査・倉庫業務の四つの工程に当てはめて整理しました。三つの形態は「何を引き受けるか」と「指揮命令がどこから出るか」で分かれ、準委任も請負と同じ37号告示の基準で判断されます。

工程ごとに論点は異なりますが、判断の分かれ目はどの工程でも共通しています。それは、発注者から作業者へ直接指示が出る経路が生じるかどうかです。直接の指示が欠かせない工程は派遣を選び、受託者が人と手順を決められる工程は、成果物を定められるかどうかで請負か準委任かを決めます。

外注を検討している工程があれば、まず「発注前の確認項目」を一つずつ当てはめてみてください。最初の問いに「はい」と答えるかどうかで、検討の出発点が決まります。

用語解説

用語 意味
請負 仕事の完成を目的とする契約(民法第632条)。作業者への指揮命令は受託者が行う
準委任 法律行為でない事務の処理を委ねる契約(民法第656条)。指揮命令は受託者が行う
労働者派遣 派遣元が雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて派遣先のために働かせること
37号告示 「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」。請負か派遣かを実態で判断する基準
疑義応答集 37号告示の具体的な当てはめを、厚生労働省がQ&A形式で示した資料。第1集から第3集まである
偽装請負 契約は請負や準委任でも、実態が労働者派遣に当たる状態
双務契約 当事者の双方が義務を負う契約。発注者の設備を借りる賃貸借契約など
管理責任者 受託者側で、作業の指示、作業者の管理、発注者との交渉を担う者
期間制限 派遣の受入れ期間の上限。事業所単位と個人単位があり、いずれも原則3年
労働契約申込みみなし制度 違法派遣を受け入れた派遣先が、派遣労働者に労働契約を申し込んだとみなされる制度(労働者派遣法第40条の6)

出典一覧