
このブログの概要|読了目安:約18分
「地域別最低賃金」という、都道府県ごとに定められ、毎年改定される賃金の下限があります。令和8年度は全国加重平均で1,177円となり、10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに発効します。
同じ10月1日には、厚生労働省の派遣先指針の改正も適用され、派遣料金の交渉で派遣先が留意すべき事項が加わります。そのため、外注を使う製造会社の発注担当者にとっては、この秋に請負や派遣の単価を見直す根拠がそろいます。
最低賃金が単価に入り込む経路は、請負・準委任・派遣で異なります。なぜなら、最低賃金を守る義務を負う会社と単価の決め方が、契約形態ごとに違うからです。
このブログでは、厚生労働省と公正取引委員会の資料をもとに、請負単価・準委任の委託料・派遣料金のそれぞれに最低賃金がどう入り込むかを示します。あわせて、発注担当者が契約更新の前に、契約書や拠点の一覧で確認しておく項目を挙げます。
■ このブログでわかること
- 最低賃金は全国加重平均で56円上がり、発効日は都道府県によって最大2か月ずれます
- 大阪府の製造業関係の特定最低賃金は、いずれも10月1日発効の大阪府最低賃金を下回ります
- 偽装請負と判断されないよう、発注側は請負単価を「人数×時給」ではなく仕事の単位で改定する必要があります
- 弊社の試算では、包装の職種は43都道府県で一般賃金の試算額が最低賃金を下回ります
- 10月1日からは、派遣料金の交渉に一切応じない派遣先の対応は法の趣旨を踏まえたものとはいえないと、派遣先指針に明記されます
10月から12月の改定
令和8年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,177円になります。厚生労働省の「令和8年度地域別最低賃金 答申状況」から主な数字を抜き出すと、次のとおりです。
- 改定前の全国加重平均:1,121円(引上げ額は56円)
- 都道府県ごとの引上げ額:54円から65円
- 最も高い額:東京都の1,280円
- 最も低い額:宮崎県の1,085円
発効日は、都道府県によって最大2か月ずれます。というのも、同じ答申状況の別紙では、最も早い都道府県が10月1日、最も遅い沖縄県が12月2日の発効になっているからです。弊社が発効時期ごとに都道府県の数を数えると、図2のとおりです。
※ 弊社が、厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金 答申状況」の発効日(予定)から集計しました。発効日は、答申後の異議の申出の状況などにより変わる可能性があります。
最低賃金は、年齢や雇用形態にかかわらずすべての労働者に適用されます。また、賃金の計算期間の途中に発効日がある場合でも、使用者は発効日以降の労働について改定後の額以上を支払う必要があります。というのも、改定後の額は賃金の締め日ではなく、発効日から効力を持つからです。
同じ10月1日には、厚生労働省の派遣元指針と派遣先指針の改正も適用され、派遣料金の交渉について派遣先が留意すべき事項が加わります。そのため、外注を使う製造会社の発注担当者にとって、10月から12月は単価を見直す根拠がそろう時期になります。
ただし、最低賃金が単価に入り込む経路は、契約形態によって異なります。弊社の事業紹介ページでは、請負・準委任・労働者派遣の三つを「引き受ける対象」と「指揮命令がどこから出るか」の二点で分けてご説明しています。
この二点で分けているのは、請負は仕事の完成を、準委任は業務の遂行を引き受けて受託者が指揮命令するのに対し、労働者派遣だけは派遣先が指揮命令するからです。つまり、派遣料金は時間単価で定めることができる一方で、請負や準委任の単価は引き受けた仕事の単位で定める必要があるため、最低賃金が単価に入る経路もこの二点で分かれます。
✔ ここがポイント
- 全国加重平均は1,121円から1,177円へ上がります(56円増)
- 発効日は10月1日から12月2日まで、都道府県ごとに異なります
- 10月1日には、派遣料金の交渉に関する指針の改正も適用されます
発効日のずれと複数拠点
発効日のばらつきは、複数の都道府県に工場や倉庫を持つ製造会社の発注担当者にとって、単価の改定日を決めるうえでの問題になります。なぜなら、どの額がいつから適用されるかは、スタッフが働く場所ごとに決まるからです。最低賃金を守る義務を負う会社と適用される額は、契約形態によって次のように分かれます。
労働者派遣
- 最低賃金法第13条により、派遣中の労働者には派遣先の事業場の所在地を含む地域の地域別最低賃金が適用されます
- たとえば、東京都に本社がある派遣元から熊本県の工場に派遣されるスタッフには、熊本県の額が、熊本県の発効日である12月1日から適用されます
- 派遣元の所在地の額や発効日は適用されません
請負と準委任
- 最低賃金を守る義務を負うのは、スタッフを雇用している受託者です
- なぜなら、発注者の工場の中で作業が行われる場合でも、スタッフの賃金を決めて支払うのは受託者だからです
全拠点の改定日の統一
発注担当者が複数拠点の外注契約をまとめて更新すると、拠点ごとの発効日の違いを見落としやすくなります。というのも、全拠点の単価の改定日を一つにそろえると、最低賃金の発効日との間に次のようなずれが生じるからです。
| 単価の |
最低賃金の |
|---|---|
| 全拠点を |
12月に |
| 全拠点を |
10月に |
! 注意
- 派遣スタッフに適用されるのは、派遣先の事業場の所在地の最低賃金です
- 発効日は予定のため変わる可能性があり、発注担当者は拠点ごとに都道府県労働局の発表で最終の発効日を確認してください
特定最低賃金との比較
製造業の場合、地域別最低賃金のほかに、産業ごとの特定最低賃金が定められていることがあります。両方が同時に適用される場合には、使用者は高いほうの額以上を支払わなければなりません。
特定最低賃金は、地域別最低賃金より高い水準が必要と認められた産業について設定される最低賃金です。しかし、特定最低賃金は地域別最低賃金とは別の時期に改定されます。そのため、地域別最低賃金が先に上がると、一時的に特定最低賃金の額を上回ることがあります。
弊社の拠点がある大阪府を例にすると、9月30日時点で大阪労働局のページに掲載されている製造業関係の特定最低賃金は、図3のとおり、いずれも10月1日発効の大阪府最低賃金1,231円を下回っています。掲載されている特定最低賃金は、いずれも2025年12月に効力を生じた額です。
| 特定最低賃金の |
時間額 | 効力発生日 |
|---|---|---|
| はん用・ |
1,197円 | 2025年12月1日 |
| 電子部品・ |
1,197円 | 2025年12月4日 |
| 自動車・ |
1,194円 | 2025年12月1日 |
| 塗料製造業 | 1,191円 | 2025年12月4日 |
| 鉄鋼業 | 1,185円 | 2025年12月1日 |
| 非鉄金属・ |
1,180円 | 2025年12月1日 |
※ 大阪労働局「大阪府の最低賃金のお知らせ」の掲載額です。件名は一部を略しています。
そのため、10月1日以降に大阪府のこれらの産業で実際の下限になるのは、地域別最低賃金の1,231円です。ここで発注担当者や受託者が誤りやすいのは、「うちは特定最低賃金の対象業種だから、その額で考えればよい」という判断です。
なぜなら、特定最低賃金の対象業種であっても、改定の時期によっては地域別最低賃金のほうが高くなるからです。そのため、大阪府以外に拠点がある会社も、拠点ごとにその都道府県の労働局のページで両方の額を見比べ、高いほうを単価の前提にする必要があります。
! 注意
- 特定最低賃金は地域別最低賃金と別の時期に改定されるため、発注担当者は契約更新の前に、拠点のある都道府県の労働局の最新の掲載額を確認してください
- 最低賃金との比較に使う賃金には、精皆勤手当・通勤手当・家族手当、賞与、時間外・休日・深夜の割増賃金は含まれません
請負単価に入る労務費
請負や準委任で最低賃金を守る義務を負うのは受託者ですが、請負単価には受託者が負担するスタッフの労務費が含まれています。したがって、最低賃金が上がれば受託者の労務費も上がるため、最低賃金の上昇は請負単価を見直す根拠になります。
ただし、発注側は見直した額を契約にどう書くかに注意が必要です。というのも、厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)に関する疑義応答集」が、発注量が日ごとに変わる場合の精算方法について、次の二つを分けて示しているからです。
- 完成した製品の個数などに基づく出来高での精算は、それだけで偽装請負と判断されるものではありません
- 仕事の完成ではなく労働者の人数に関して受発注を行い、投入した労働力の単価をもとに請負料金を精算している場合は、単なる労働力の提供にすぎず、偽装請負と判断されることになるとしています
この二つを最低賃金の改定に当てはめると、発注側が契約書の書き方で避けるべきことが分かります。請負単価の改定を「1人あたりの時給が56円上がったので、人数×時間で上乗せする」と契約に書くと、人数に対して料金を払う契約に近づき、偽装請負と判断されるおそれが出てきます。
そのため、発注側と受託者は、最低賃金の上昇を交渉の根拠として使いながらも、契約上の単価は引き受けた仕事の単位で改定し続ける必要があります。仕事の単位とは、たとえば次のようなものです。
- 製品1個あたり
- 工程1ロットあたり
- 月間の処理量あたり
準委任は、仕事の完成ではなく「業務の遂行」を引き受ける契約です。ただし、37号告示は契約の名称ではなく実態で判断するため、準委任であっても、受託者が自ら業務の遂行方法を指示し、労働者の配置や労働時間を管理していることが前提になります。そのため、準委任の委託料も、人数や時間ではなく業務の範囲と量を単位に決める点は請負と変わりません。
✔ ここがポイント
- 請負・準委任では、最低賃金を守る義務を負うのは受託者です
- 最低賃金が上がると受託者の労務費も上がるため、請負単価を見直す根拠になります
- 偽装請負と判断されないよう、契約上は「人数×時給」ではなく仕事の単位で単価を改定します
派遣料金と一般賃金
労働者派遣では、最低賃金の上昇が請負よりも直接、派遣料金に響きます。なぜなら、派遣元が労使協定方式を採っている場合、派遣スタッフの賃金には最低賃金のほかに一般賃金というもう一つの下限があり、どちらの下限も派遣料金の下限につながるからです。
派遣元は、厚生労働省が毎年示す一般賃金の額と同等以上の賃金を、労使協定で定めなければなりません。2026年8月28日付の厚生労働省職業安定局長通達(職発0828第5号)は、2027年4月1日から2028年3月31日までに適用される令和9年度の一般賃金を示しました。なぜなら、派遣元が2027年4月以降の労使協定で定める賃金は、この令和9年度の一般賃金と同等以上でなければならないからです。
通達では、一般賃金(基本給・賞与・手当等)を、職種別の基準値に能力・経験調整指数と地域指数を掛けて算出すると定めています。地域指数は都道府県ごとに定められ、全国計を100としているため、同じ職種でも都道府県によって一般賃金の額が変わります。
弊社が、製品検査従事者(金属製品を除く)と包装従事者の「勤続0年」の基準値に主な都道府県の地域指数を掛けて試算すると、図4と次の表の額になります。図4では、赤い縦線が改定後の最低賃金を、赤い数字が最低賃金を下回る試算額を表しています。
| 都道府県 | 改定後の |
地域指数 | 製品検査の |
包装の |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 1,131円 | 95.2 | 1,148円 | 1,067円 |
| 宮城 | 1,098円 | 95.9 | 1,156円 | 1,075円 |
| 東京 | 1,280円 | 110.3 | 1,330円 | 1,236円 |
| 愛知 | 1,195円 | 104.0 | 1,254円 | 1,165円 |
| 大阪 | 1,231円 | 106.7 | 1,286円 | 1,196円 |
| 福岡 | 1,114円 | 97.0 | 1,169円 | 1,087円 |
| 鹿児島 | 1,090円 | 90.3 | 1,089円 | 1,012円 |
※ 通達の別添1(賃金構造基本統計調査)の基準値(0年)は、製品検査従事者(金属製品を除く)が1,205円、包装従事者が1,120円です。弊社は試算で1円未満を切り上げました。実際にどの職種・統計を使うかは、派遣元が労使協定で決めます。
この表では、包装の試算額が、掲載したすべての都道府県で改定後の最低賃金を下回っています。そこで弊社が47都道府県すべてで同じ計算をすると、職種ごとの結果は図5と次のとおりになりました。
- 包装従事者:試算額が改定後の最低賃金を下回るのは43都道府県です
- 製品検査従事者(金属製品を除く)と電気機械器具組立従事者:下回るのは、東北・山陰・四国・九州などの12県です
- 機械器具組立(はん用・生産用・業務用)と塗装の職種:下回る都道府県はありませんでした
通達は、地域指数を掛けた「基準値(0年)」が地域別最低賃金を下回る場合には、最低賃金の額を基準値として一般賃金を計算し直すよう定めています。そのため、包装のように試算額が最低賃金に届かない職種や地域では、最低賃金の改定が、そのまま派遣スタッフの賃金の下限を押し上げることになります。
ただし、発注担当者がこの表の差額を読むときには注意が必要です。というのも、一般賃金の「基本給・賞与・手当等」は賞与を含めて時給に換算した額ですが、最低賃金との比較に使う賃金には賞与が含まれないからです。したがって、表の差額をそのまま時給の上乗せ幅として読むことはできません。
派遣を使う発注側が押さえておきたいのは、派遣料金の下限が年に二度動くという点です。なぜなら、10月から12月には最低賃金が変わり、翌年4月には新しい年度の一般賃金が適用されるからです。そのため、派遣契約の更新時期がどちらに近いかによって、派遣元から料金の見直しを求められる時期も変わります。
■ この章のまとめ
- 労使協定方式では、令和9年度の一般賃金が2027年4月から派遣元の労使協定に適用されます
- 一般賃金の試算額が最低賃金を下回る職種・地域では、最低賃金の額が一般賃金の基準値になります
- 弊社の試算では、包装は43都道府県、製品検査は12県で試算額が最低賃金を下回ります
- 派遣料金の下限は、秋の最低賃金と4月の一般賃金で年二回動きます
派遣先指針の改正点
10月1日からは、派遣料金の交渉で派遣先が留意すべき事項が、派遣先指針に具体的に書き加えられます。その前提として、労働者派遣法第26条第11項は、派遣元が派遣労働者の公正な待遇を確保できるよう、派遣先に派遣料金について配慮することを求めています。
厚生労働省の「派遣労働者の同一労働同一賃金改正概要資料」によると、改正後の派遣先指針には次の二つの場合が示されています。どちらも、第26条第11項の趣旨を踏まえた対応とはいえないことに留意するとされています。
- 派遣元による派遣料金の交渉に一切応じない場合
- 派遣元が賃金などの待遇の確保に必要な額を示して交渉したにもかかわらず、派遣料金がその必要な額を下回る場合
あわせて、改正後の派遣元指針は、派遣料金の交渉が派遣労働者の待遇改善にとって極めて重要であることを踏まえて交渉に当たるよう、派遣元に求めています。また、派遣料金が引き上げられた場合には、派遣元はできる限り派遣労働者の賃金を引き上げるよう努めるとされ、職発0828第5号の通達もこの規定に留意するよう求めています。
つまり、10月以降は、派遣元が最低賃金や一般賃金をもとに必要な額を示してきたとき、派遣先が交渉のテーブルにつかない、あるいは根拠を聞かずに据え置くという対応は取りにくくなります。だから、派遣先の発注担当者は、派遣元が示した額の根拠となる最低賃金や一般賃金を確かめたうえで、料金を協議する必要があります。
! 10月1日から適用
- 派遣元からの派遣料金の交渉に一切応じない対応は、法の趣旨を踏まえたものとはいえないとされます
- 待遇の確保に必要な額を示された後に、それを下回る料金に決めることも同様です
取適法と労務費転嫁指針
ここまでの派遣先指針は、派遣契約だけに当てはまるルールです。それでは、請負や準委任の単価交渉には何が当てはまるのでしょうか。請負や準委任で関係するのは、2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法(取適法)と、内閣官房・公正取引委員会の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」です。
取適法
公正取引委員会の取適法の概要資料によると、下請法から取適法への改正で、次の点が変わりました。このうち一つ目は、発注側が単価の協議にどう応じるかに直接関わります。
- 代金に関する協議に応じないことや、協議で必要な説明・情報提供をしないことによる一方的な代金額の決定が禁止されました
- 適用の基準に、従業員数300人(役務提供委託などは100人)の区分が加わりました
製造委託などの対象取引に当たるかどうかは、取引の内容と、発注側・受注側の資本金や従業員数で決まります。そのため、発注担当者は、自社の外注契約が対象になるかどうかを、契約ごとに取引の内容と相手先の資本金・従業員数から確かめる必要があります。
労務費転嫁指針
一方、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」は、取適法の対象かどうかにかかわらず、労務費の上昇分を価格に転嫁するために発注者が取るべき行動を示しています。この指針は2023年11月29日に策定され、2026年1月1日に改正されたもので、発注者に求めている主な行動は次のとおりです。
- 受注者に労務費上昇の理由や根拠資料を求める場合は、都道府県別の最低賃金やその上昇率などの公表資料に基づくものとすること
- 受注者が公表資料を用いて示した希望価格は、合理的な根拠のあるものとして尊重すること
- 満額を受け入れない場合は、その根拠や合理的な理由を説明すること
取適法と労務費転嫁指針を合わせると、請負単価の見直しでも、派遣料金と同じく、発注側には根拠を聞いたうえで協議することが求められます。たとえば受託者が、拠点のある都道府県の最低賃金の上昇率を根拠に単価の改定を申し出た場合、発注側は内部資料の詳細を求めるより先に、公表資料に基づく根拠として受け止めて協議することになります。なぜなら、指針は労務費上昇の根拠を公表資料に基づくものとするよう求め、それを用いた希望価格を尊重するよう求めているからです。
✔ ここがポイント
- 取適法の対象取引では、協議に応じない一方的な代金決定が禁止されています
- 労務費転嫁指針は、最低賃金の上昇率を合理的な根拠として尊重するよう求めています
- 請負単価でも、派遣料金と同じく、発注側は根拠を確認したうえで協議します
三形態の単価の改定方法
ここまでの内容を契約形態ごとに並べると、最低賃金を守る義務を負う会社と、単価の交渉で当てはまるルールの違いは図7のようになります。
※ 取適法は、取引内容と資本金・従業員数の要件を満たす取引が対象です。労務費転嫁指針は取適法の対象かどうかにかかわらず示されています。
この図のうち発注担当者が見落としやすいのは、単価の決め方の違いです。というのも、最低賃金の上昇分を単価にどう反映できるかは、契約形態によって次のように異なるからです。
| 契約形態 | 最低賃金の |
|---|---|
| 労働者派遣 |
上昇分を |
| 請負・ |
時間単価に |
つまり、同じ最低賃金の改定でも、請負単価は仕事の単位で改定し、派遣料金は時間単価で改定できます。なぜなら、請負単価を人数と時間で改定すると、人数に対して料金を払う契約に近づき、偽装請負と判断されるおそれがあるからです。
契約更新前の確認項目
最低賃金は毎年改定されます。そのため、発注担当者は今回の見直しを一回限りの値上げ対応で終わらせず、翌年以降も同じ手順で判断できるようにしておくと、毎年の単価交渉で迷いにくくなります。発注担当者が契約更新の前に、契約書や拠点の一覧で確認しておきたい項目は次のとおりです。
☑ 発注側の確認項目
- 外注している業務ごとに、契約形態が請負・準委任・派遣のどれになっているか
- 請負・準委任の単価が、人数や時間ではなく、製品や業務の単位で定められているか
- 拠点ごとの都道府県と、その最低賃金の額・発効日
- 特定最低賃金の対象業種の場合、地域別最低賃金とどちらが高いか
- 派遣元が労使協定方式を採っている場合、どの職種区分の一般賃金を使っているか
- 派遣契約の更新時期が、秋の最低賃金改定と4月の一般賃金改定のどちらに近いか
- 受託先から単価改定の申し出があったとき、協議の場を設ける手順が社内にあるか
- 自社の外注取引が、取適法の対象取引に当たるかどうか
特に最初の二つは、最低賃金とは関係なく確認しておく価値があります。なぜなら、単価の改定をきっかけに契約書を見直したとき、請負のはずの契約が人数と時間で精算する内容になっていたと分かることがあるからです。その場合、発注側と受託者は単価の額を決める前に、精算の単位を製品や業務の単位に改めるよう、契約の中身を見直す必要があります。
一方で、派遣の場合は、料金の見直しを求められる時期をあらかじめ予定に入れておくことができます。なぜなら、最低賃金と一般賃金はどちらも毎年公表されるからです。
そのため、発注担当者が予算を組む段階で両方の改定を見込んでおくと、派遣元との交渉が急な話になりにくくなります。また、複数の拠点を持つ会社であれば、拠点ごとの発効日を一覧にしておくと、拠点ごとに契約更新の時期を決めやすくなります。
弊社は、組立、機械塗装、検査、倉庫業務を受託しており、契約形態は請負、準委任、労働者派遣から選んでいただけます。というのも、同じ工程でも、発注側が仕事の完成を任せたいのか、自社の指揮命令で人手を補いたいのかによって、合う契約形態が変わるからです。工程ごとにどの形態が合うかのご相談は、製造請負のお問い合わせからお寄せください。
よくある質問
まとめ
このブログでは、令和8年度の地域別最低賃金の改定を受けて、請負・準委任・労働者派遣のそれぞれで最低賃金が単価にどう入り込むかを示しました。なぜなら、最低賃金を守る義務を負う会社と単価の決め方が契約形態ごとに違い、発注側が契約更新の前に確かめる点も形態ごとに変わるからです。
だから、全国加重平均が1,177円に上がり、発効日が10月1日から12月2日まで都道府県ごとに異なる今年は、発注担当者が拠点ごと・契約形態ごとに単価の改定方法を見直す時期になります。
■ このブログの要点
- 発効日は10月1日から12月2日まで、拠点の都道府県ごとに異なります
- 請負と準委任では、最低賃金を守る義務は受託者にあり、最低賃金の上昇は単価を見直す根拠になります
- 偽装請負と判断されないよう、請負単価の改定は「人数×時給」ではなく、仕事の単位で行う必要があります
- 派遣では、派遣先の所在地の最低賃金と一般賃金が派遣料金の下限となり、その下限は秋と4月の年二回動きます
☑ 次にすること
- 「契約更新前の確認項目」を使い、外注している業務ごとの契約形態と単価の決め方を契約書で確認する
- 複数の拠点がある場合は、拠点ごとの最低賃金の額と発効日を一覧にする
- 特定最低賃金の対象業種であれば、地域別最低賃金とどちらが高いかを労働局のページで見比べる
受託先や派遣元から単価改定の申し出があったときは、発注側が根拠を確認したうえで協議することが、どの契約形態でも共通の出発点になります。なぜなら、派遣先指針は交渉に一切応じない対応を法の趣旨を踏まえたものとはいえないとし、取適法は協議に応じない一方的な代金決定を禁止しているからです。
用語解説
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 地域別最低賃金 | 都道府県ごとに |
| 特定最低賃金 | 特定の |
| 発効日 | 改定された |
| 請負 | 仕事の |
| 準委任 | 業務の |
| 労働者派遣 | 派遣元が |
| 37号告示 | 「労働者派遣事業と |
| 偽装請負 | 契約は |
| 労使協定方 |
派遣元が |
| 一般賃金 | 同じ |
| 地域指数 | 一般賃金の |
| 取適法 | 中 |
出典一覧
- 厚生労働省「令和8年度最低賃金額答申」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_75950.html
- 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金 答申状況」(別紙) https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001745621.pdf
- 大阪労働局「大阪府の最低賃金のお知らせ」(2026年9月30日閲覧) https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/jirei_toukei/saitei_chingin/saitei.html
- 厚生労働省職業安定局長通達「令和9年度の『労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額』等について」(職発0828第5号、2026年8月28日) https://www.mhlw.go.jp/content/001743623.pdf
- 大阪労働局「令和8年10月1日派遣労働者の同一労働同一賃金の改正について」 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/mokuteki_naiyou/haken_yuuryousyoukai/202608ddkaisei.html
- 厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金改正概要資料」 https://www.mhlw.go.jp/content/001696942.pdf
- 厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金改正ポイントのご案内」 https://www.mhlw.go.jp/content/001701327.pdf
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gigi_outou01.html
- 厚生労働省「『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準』(37号告示)に関する疑義応答集」 https://www.mhlw.go.jp/content/001328443.pdf
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号) https://www.mhlw.go.jp/content/000780136.pdf
- e-Gov法令検索「最低賃金法」(第13条) https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000137
- 内閣官房・公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(2023年11月29日策定、2026年1月1日改正) https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/romuhitenka.html
- 公正取引委員会「取適法(中小受託取引適正化法)」 https://www.jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou.html
- 公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律 概要」 https://www.jftc.go.jp/partnership_package/toritekihou-gaiyo.pdf











