
このブログの概要|読了目安:約11分
本日のブログは、2026年10月1日に義務化されたカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)対策について、婚礼部門ではどの会社が措置を講じるのかをお伝えします。改正労働施策総合推進法により、カスハラ対策は労働者を雇用するすべての事業主の義務になりました。この義務は、会社ごとに、自社が雇用する労働者に対して課されるものです。
婚礼部門では、婚礼施設の社員、派遣スタッフ、受託会社の社員、受託会社から再委託を受けた個人のフリープランナーが、同じ新郎新婦に対応します。雇用主が異なる人が一つの婚礼に携わることになります。では、カスハラ対策の措置は、どの会社が講じるのでしょうか。
結論からお伝えすると、カスハラ対策の措置は、各人を雇用している会社が講じます。 本日のブログでは、改正法と厚生労働省の指針の内容を、婚礼部門で働く人の立場ごとに整理します。
弊社は2026年10月5日のブログ「ホテル・レストランの婚礼部門〜自社運営と運営委託の違い」で、婚礼施設からの連絡窓口を受託会社の責任者とし、契約の段階で定めておくことをお伝えしました。本日のブログでは、カスハラが発生した際の報告と対処をこの窓口で行うために、契約で定めておく事項もあわせてお伝えします。
■ このブログでわかること
- カスハラ対策は2026年10月1日から、労働者を雇用するすべての事業主の義務です
- 婚礼施設の社員は婚礼施設が、受託会社の社員は受託会社が措置を講じます
- 再委託を受けた個人のフリープランナーは措置義務の対象外ですが、厚生労働省の指針は同じ方針を示すことを望ましい取組としています
- 新郎新婦からの苦情がすべてカスハラに当たるわけではなく、正当な申入れは含まれません
- 婚礼施設と受託会社が契約で定めておくべきと弊社が考える六つの項目
カスハラ対策は2026年10月1日から事業主の義務です
労働施策総合推進法第33条第1項によると、事業主は、顧客や取引の相手方などの言動のうち、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、雇用する労働者の就業環境が害されないよう、措置を講じなければなりません。
あわせて、厚生労働省は2026年2月26日に「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号、以下「カスハラ指針」)を告示し、事業主が講じる措置として次の五つを示しています。
- 方針の明確化と周知:顧客等の言動から労働者を保護する方針と、あらかじめ定めた対処内容の周知
- 相談体制の整備:相談窓口の設置と周知、および窓口で適切に対応できる体制の整備
- 事後の迅速かつ適切な対応:事実関係の確認、被害者への配慮、再発防止
- 抑止のための措置:特に悪質なものへの対処方針の策定と、対処できる体制の整備
- 併せて講じる措置:相談者のプライバシー保護と、相談を理由に不利益な取扱いをしないことの周知
厚生労働省のリーフレットでは、これらが10項目の措置として示されています。いずれの措置も、各社が雇用する労働者を保護するためのものです。
婚礼部門では雇用している会社がカスハラ対策を講じます
カスハラ対策の措置を講じるのは、雇用主である会社です。婚礼部門で働く人の立場ごとに整理すると、次のとおりです。
婚礼施設の社員については婚礼施設が、受託会社の社員については受託会社が、それぞれ措置を講じます。カスハラ指針によると、「職場」とは労働者が業務を行う場所を指し、取引先の事務所も含まれるとの記載があります。そのため、受託会社の社員にとっては、婚礼施設の会場や打合せの席も職場に当たります。
婚礼施設が派遣スタッフを受け入れている場合は、派遣元に加えて婚礼施設も措置を講じます。なぜならば、カスハラ指針が、派遣先も派遣スタッフを雇用する事業主とみなすとしているからです。
2026年10月5日のブログ「ホテル・レストランの婚礼部門〜自社運営と運営委託の違い」では、婚礼部門の業務を集客・新規接客・打合せ・当日の運営統括の四つに分けてご説明しました。運営を委託すると、これらの工程は受託会社が担い、受託会社の社員は婚礼施設の宴会サービスの社員と同じ会場で業務にあたります。
一方で、受託会社から再委託を受けた個人のフリープランナーは、どの会社にも雇用されていません。第33条の措置の対象は「その雇用する労働者」なので、個人のフリープランナーは措置義務の対象外です。
ただし、カスハラ指針7は、他社の労働者や個人事業主に対する顧客等の言動についても、同じ方針を併せて示すことを望ましい取組としています。また、フリーランス法第14条により、個人のフリープランナーに業務を委託した会社は、従業員を使用している場合、ハラスメントの相談に応じる体制を整備しなければなりません。
この取組について、厚生労働省のリーフレットは、小売店で商品を販売するメーカーの社員を例に挙げています。弊社は、婚礼施設の会場で新郎新婦を担当する個人のフリープランナーも、これと同じ立場に当たると考えています。
✔ ここがポイント
- 措置義務は、雇用主である会社が自社の労働者に対して負います
- 受託会社の社員にとっては婚礼施設の会場も職場に当たり、措置は受託会社が講じます
- 個人のフリープランナーは対象外ですが、婚礼施設と受託会社が同じ方針を示すことが望ましいとされています
正当な申入れはカスハラに当たりません
カスハラ指針によると、顧客等からの苦情の全てがカスハラに該当するわけではなく、社会通念上許容される範囲で行われたものは「正当な申入れ」であるとの記載があります。そのうえで、範囲を超えるかどうかは、「言動の内容」と「手段や態様」の二つの観点から総合的に判断するとしています。
どちらか一方だけが範囲を超える場合でも、カスハラに該当する可能性があります。一方で、見積や契約内容に関する新郎新婦の質問や苦情は、それだけではカスハラに当たりません。
また、カスハラ指針は、事業主や労働者の側の不適切な対応が、言動の原因や背景になっている場合があることへの留意も求めています。
さらに同指針は、商品・サービス・接客の問題や、顧客等とのコミュニケーション不足も、原因や背景になり得るとしています。
婚礼部門で特に注意が必要なのは、工程の境目の引き継ぎだと弊社は考えています。なぜならば、婚礼施設の社員と受託会社の役割分担があいまいだと、新郎新婦への重複した質問や、共有されているはずの希望が当日に反映されないといった事態が生じるおそれがあるからです。だからこそ、引き継ぎの手順を定めておくことは、苦情の原因を減らすことにもつながります。
! 苦情対応の留意点
- 見積や契約内容に関する質問や苦情は、それだけではカスハラに当たりません
- カスハラ指針は、事業主や労働者の側の対応が原因となる場合への留意を求めています
- 言動の内容と手段や態様の両面から、総合的に判断します
カスハラ対策の報告窓口は受託会社の責任者に一本化します
ここからは、弊社の考えです。受託会社のウエディングプランナーがカスハラに当たる言動を受けた場合の報告先は、受託会社の責任者とすることをおすすめします。
カスハラ指針は、あらかじめ定める対処の例として、労働者が管理監督者に直ちに報告し、その場の対応方針について指示を仰ぐことを挙げています。受託会社の社員にとっての管理監督者は、受託会社の責任者です。
また、2026年10月5日のブログ「ホテル・レストランの婚礼部門〜自社運営と運営委託の違い」でお伝えしたとおり、婚礼施設の社員が受託会社のウエディングプランナーに直接作業を指示すると、実態として労働者派遣と判断される場合があります。だからこそ、カスハラの報告も婚礼施設からの連絡と同じ受託会社の責任者に一本化すれば、報告経路と指示経路が統一され、婚礼施設の社員からの直接指示も避けられます。
2026年10月14日のプラスワン・プランナーのブログ「「丸投げ」にならない業務委託の発注手順」でも、相談窓口を定める際にハラスメントの相談先も併せて定めておけば、手続が一度で済むことをお伝えしています。
悪質な事案への対処方針の策定も義務です
カスハラ指針は、労働者への過度な要求の繰り返しなど、特に悪質と考えられるものへの対処方針をあらかじめ定め、対処できる体制を整えることも事業主の義務としています。対処の例として挙げられているのは、次のとおりです。
- 犯罪に当たり得る言動について、警察へ通報すること
- 行為者に警告文を発出すること
- 法令の範囲内で、商品の販売やサービスの提供をしないこと
- 店舗や施設への出入りを禁止すること
- 民事保全法に基づく仮処分命令を申し立てること
このうち、サービスの提供を行わないという判断は、新郎新婦と契約している会社が行うものです。また、カスハラ指針は、サービスの途絶により顧客等に重大な影響が及ぶ場合などに留意して対応するよう求めています。
そのため、新郎新婦の契約相手が婚礼施設であれば、受託会社が対処方針を定めても、実行には婚礼施設の判断が欠かせません。さらに、婚礼は日程が確定しており、サービスの提供を停止すれば、新郎新婦とご家族に大きな影響が及びます。だからこそ弊社は、どの段階で、誰が、何を判断するかを、婚礼施設と受託会社が契約の段階で定めておくことをおすすめしています。
また、カスハラ指針は、顧客等とのやり取りの録音・録画も対処の例に挙げています。ただし、その際は個人情報保護法などを遵守し、顧客等の個人情報を適切に取り扱うよう求めています。
打合せを婚礼施設で行う場合、録音・録画の可否や記録の共有範囲は、婚礼施設と受託会社の双方に関わります。そのため、記録の扱いも契約で定めておく項目の一つです。
! 対処方針を定める際の留意点
- 警告やサービスの提供を行わない判断は、新郎新婦と契約している会社が行います
- 婚礼は日程が確定しているため、どの段階で誰が判断するかを事前に定めておきます
- 録音・録画は、個人情報保護法などを遵守して取り扱います
他社からの協力要請には応じる努力義務があります
婚礼施設の会場で発生した事案の事実確認には、受託会社の情報だけでなく、婚礼施設の記録や婚礼施設の社員からの聞き取りが必要になる場合があります。
労働施策総合推進法第33条第3項によると、事業主は、他の事業主から措置の実施に必要な協力を求められた場合、これに応じるよう努めなければなりません。つまり、受託会社から事実確認への協力を求められれば、婚礼施設には応じる努力義務があります。反対に、婚礼施設から求められた場合は、受託会社に同じ努力義務があります。
婚礼施設の社員も受託会社の社員から見れば顧客等に当たります
カスハラ指針は、「顧客等」に「取引先の担当者」も含めています。そのため、受託会社の社員から見れば、婚礼施設の社員も顧客等に当たります。内容や手段が範囲を超えれば、婚礼施設の社員の言動も、受託会社の社員に対するカスハラになり得ます。
労働施策総合推進法第34条第2項によると、事業主は、雇用する労働者が他社の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修などの配慮に努めることとされています。さらに第34条第3項は、事業主や役員自身も注意を払うよう努めることを定めています。
加えて、カスハラ指針は、協力を求められたことを理由に、相手との契約を解除するなどの不利益な取扱いを行うことは望ましくないとしています。
婚礼施設と受託会社が契約で定めるカスハラ対策の六つの項目
以上の法律と指針を踏まえ、弊社は、婚礼施設と受託会社が契約の段階で次の六つの項目を定めておくことをおすすめしています。なぜならば、いずれの項目も、婚礼施設か受託会社の一方だけでは決定できないからです。
- 方針の範囲:婚礼施設と受託会社がそれぞれ示す方針に、個人のフリープランナーを含めるかどうかを定めます
- 報告の窓口:受託会社側の報告先を受託会社の責任者とし、婚礼施設への共有経路を定めます
- 事実確認の協力:婚礼施設の記録や社員からの聞き取り内容を共有する手順を定めます
- 悪質な事案の対処:警告やサービスの提供を行わない判断を、誰がどの段階で行うかを定めます
- 記録の扱い:録音・録画の可否と記録の共有範囲を定めます
- 取引先としての方針:婚礼施設の社員から受託会社側への言動に関する方針と相談先を定めます
☑ 契約前の確認事項
- 婚礼施設の社員、派遣スタッフ、受託会社の社員、個人のフリープランナーそれぞれの相談先が明確か
- 受託会社の責任者と婚礼施設の責任者の連絡先を両社で共有しているか
- 新郎新婦への警告など、婚礼施設として判断する事案と判断する責任者が定まっているか
- 工程の境目ごとに引き継ぎの手順が定まっているか
弊社の運営受託では方針の範囲と報告の窓口を事前に確認します
弊社の婚礼施設の運営受託では、集客・新規接客・打合せ・当日の運営のすべて、または一部をご依頼いただけます。また、フリープランナーのアウトソーシング(プラスワン・プランナー)は、婚礼施設・弊社・フリープランナーの三者間契約で、弊社が婚礼施設から受託した業務をフリープランナーへ再委託しています。
そのため、弊社にご依頼いただく場合、婚礼施設で新郎新婦を担当するのは、再委託を受けた個人のフリープランナーです。だからこそ、図4のうち「方針の範囲」と「報告の窓口」は、ご依頼の段階で婚礼施設と弊社の間で確認しておくことをおすすめしています。
よくある質問
まとめ
本日のブログでは、2026年10月1日に義務化されたカスハラ対策について、婚礼部門ではどの会社が措置を講じるのかをお伝えしました。カスハラ対策は労働者を雇用するすべての事業主の義務で、会社ごとに、自社が雇用する労働者に対して講じるものです。
そのため、婚礼部門では、婚礼施設の社員は婚礼施設が、受託会社の社員は受託会社が措置を講じます。派遣スタッフについては派遣元と婚礼施設の双方が講じます。再委託を受けた個人のフリープランナーは措置義務の対象外ですが、同じ方針を示すことが望ましいとされています。
また、新郎新婦からの正当な申入れはカスハラに当たりません。さらに事業主には、他社からの協力要請に応じる努力義務と、雇用する労働者が他社の労働者に必要な注意を払うよう配慮する努力義務もあります。
婚礼部門の運営受託やフリープランナーのアウトソーシングをご検討の場合は、婚礼施設様向けのお問い合わせからご相談ください。
用語解説
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| カスタマーハラスメント | 顧客等の |
| 顧客等 | 顧客、 |
| 措置義務 | 事業主が |
| 正当な |
社会通念上許容される |
| 職場 | 労働者が |
| 運営受託 | 婚礼部門の |
| 再委託 | 受託した |
| フリーランス法 | 特定受託事業者に |
出典一覧
- 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号、2026年2月26日) https://www.mhlw.go.jp/content/001662625.pdf
- 厚生労働省「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」(リーフレット詳細版) https://www.mhlw.go.jp/content/001662630.pdf
- 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」(2026年10月23日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
- e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」第33条・第34条(2026年10月23日閲覧) https://laws.e-gov.go.jp/law/341AC0000000132
- 厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号) https://www.mhlw.go.jp/content/000780136.pdf
- e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」第14条(2026年10月23日閲覧) https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025














