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「雇用人員判断DI」という、日本銀行が企業に人手の過不足を尋ね、その答えを一つの数字にまとめた指標があります。この数字は日本銀行の短観(全国企業短期経済観測調査)に載っており、マイナスが大きいほど「人手が足りない」と答えた企業が多いことを表します。この数字を含む2026年9月調査の結果は、10月1日に日本銀行から公表されました。
弊社はこれまで、このブログで最低賃金と請負単価の関係や、工程ごとの請負と派遣の選び分けをご説明してきました。どちらも、製造会社が工程を外部に任せると決めた後に、契約形態と単価を選ぶための話です。しかし、製造会社が外部に任せるかどうかを決めるには、その前に自社の業種や規模で人手がどのくらい足りないのかを知る必要があり、10月1日に公表された9月調査がその材料になります。
9月調査では、製造業で業況が「良い」と答える企業が増えた一方で、雇用人員判断DIは全規模合計で-29となり、6月調査の-27から不足の側に動きました。中小企業に限ると-32で、企業が答えた12月までの先行きは-37とさらに不足の側に出ています。そこでこのブログでは、日本銀行の統計表から製造業の数字を規模別・業種別に読み、製造会社が生産量の増える期間の人員を自社雇用と外部への委託にどう分けて決めればよいかをご説明します。
■ このブログでわかること
- 2026年9月調査の製造業の雇用人員判断DIは、全規模合計で-29、中小企業で-32です
- 同じ9月調査で、製造業の業況判断DIは上がり、生産・営業用設備判断DIは不足の側に動いています
- 企業が3か月前に答えた先行きの予測は、2026年の2回とも実績より不足の側に出ていました
- 業種別では、はん用機械や鉄鋼で不足感が強まり、金属製品と食料品はほぼ横ばいです
- 製造会社は、一年を通して必要な人数と増える分を分けると、外部に任せる範囲を決められます
雇用人員判断DIとは
短観は、日本銀行が四半期ごとに全国の企業に景気の判断や事業計画を尋ねる調査です。日本銀行が公表した2026年9月調査の概要は、次のとおりです。
- 調査対象:9,104社(そのうち製造業は3,776社)
- 回答率:99.4%
- 回答期間:8月26日から9月30日まで
- 公表:10月1日
調査対象の企業のうち99.4%が回答しているため、9月調査の数字は、調査対象の企業のほぼすべての答えを反映しています。
雇用人員判断では、企業は自社の人手について「過剰」「適正」「不足」の三つから一つを選びます。日本銀行の「「短観(企業短期経済観測調査)」の解説」によると、DIは第1選択肢の回答社数の構成比から、第3選択肢の構成比を引いて算出します。雇用人員判断では「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引くことになるため、マイナスの数字は「不足」と答えた企業が「過剰」と答えた企業より多いことを意味します。
また、短観は企業に、回答時点の判断である「最近」と、3か月後までの見通しである「先行き」の二つを尋ねています。そのため、9月調査の「先行き」は、企業が12月までの人手をどう見ているかを表します。
! 比べるときの注意
- 日本銀行は「短観(概要)」で、2023年12月調査と2025年12月調査では調査対象企業を見直したため、数字が不連続になっていると注記しています
- そのため、このブログでは見直し後の2026年3月調査からの数字だけを並べ、見直しの前後をまたいで比べることはしていません
製造業の規模別の数字
日本銀行の統計表から製造業の雇用人員判断DIを規模別に取り出し、6月調査からの動きと並べると次のとおりです。表のとおり、大企業から中小企業まで、すべての規模で不足の側に動いています。
| 規模 | 9月調査 | 6月調査からの |
|---|---|---|
| 大企業 | -22 | 1ポイント不足の |
| 中堅企業 | -30 | 1ポイント不足の |
| 中 |
-32 | 4ポイント不足の |
| 全規 |
-29 | 2ポイント不足の |
図1で3月・6月・9月の調査と12月の予測を並べると、次の二つのことが分かります。
- 規模が小さいほど不足が大きい:9月調査では、大企業の-22に対して中小企業は-32で、10ポイントの差があります
- 6月の戻りを9月に打ち消した:全規模合計は3月から-28、-27、-29と動き、6月に1ポイント戻した分を上回って、9月に2ポイント下がりました
さらに、企業が答えた12月までの先行きは、すべての規模で9月より不足の側に出ています。なかでも中小企業の先行きは-37で、中小企業自身が9月から5ポイント不足が強まると見ていることになります。
なお、日本銀行の「短観(概要)」によると、9月調査の非製造業の全規模合計は-44、全産業の全規模合計は-38でした。数字だけを比べれば、製造業の-29は非製造業より不足感が弱いといえます。
ただし、製造業だから人手に余裕があるとはいえません。なぜなら、製造業の中小企業は-32で、「不足」と答えた企業が「過剰」と答えた企業を32ポイント上回っており、全産業の-38との差も6ポイントにとどまるからです。
✔ ここがポイント
- 製造業の雇用人員判断DIは、全規模合計で-29、中小企業で-32です
- 規模が小さいほど不足の側に出ており、企業が答えた12月の先行きはどの規模でもさらに下がっています
業況・設備・雇用の三つのDI
製造業の企業が「不足」と多く答えた背景は、同じ9月調査で企業が答えた業況と設備の判断からも読み取れます。というのも、三つの判断は同じ調査で同じ企業が同じ時期に答えたものだからです。製造業の全規模合計で、6月から9月への動きを並べると次のとおりです。
- 業況判断DI:+14から+19に上がりました
- 生産・営業用設備判断DI:-2から-4に下がりました
- 雇用人員判断DI:-27から-29に下がりました
つまり、業況が「良い」と答える企業が増えた同じ3か月の間に、設備と人手の両方で「不足」と答える企業が増えています。短観は、企業がなぜ人手が足りないと答えたのかまでは尋ねていません。そのため弊社も理由を断定することはできませんが、三つの判断を合わせて見ると、仕事の量に対して設備も人も足りないと感じる企業が増えた、と読むことができます。
この読み方は、工程を外部に任せるかどうかを考える製造会社の判断を左右します。なぜなら、人手の不足が業績の悪化から来ているのであれば、製造会社は人を減らす方向で考えますが、仕事の量が増える中での不足であれば、増えた仕事を誰がこなすかを決める判断になるからです。
12月までの先行きでは、業況判断は+16に下がる一方で、雇用人員判断は-34とさらに不足の側に出ています。つまり、製造業の企業自身が、業況の見通しを少し慎重にしながらも、人手の不足感は12月まで弱まらないと見ています。
先行きの予測と実績の差
製造会社が先行きの数字を使うときは、過去の予測が実績とどれだけずれたかを見てから受け止める必要があります。なぜなら、先行きは企業が3か月後を予想して答えた数字であり、実績と同じになるとは限らないからです。
日本銀行の統計表には、各調査の実績と並んで、3か月前の調査で企業が答えた予測の数字が載っています。製造業について2026年の2回分を並べると、次のとおりです。
| 対象の |
全規模・ |
全規模・ |
中小・ |
中小・ |
|---|---|---|---|---|
| 2026年6月 | -31 | -27 | -35 | -28 |
| 2026年9月 | -31 | -29 | -33 | -32 |
※ 予測は、3か月前の調査で企業が答えた「先行き」の数字です。日本銀行「全国企業短期経済観測調査(2026年9月調査)」の統計表より弊社が作成しました。
この表と図4から分かるとおり、2026年の2回とも、予測は実績よりも不足の側に出ていました。全規模合計では、6月分は予測-31に対して実績-27、9月分は予測-31に対して実績-29です。したがって、12月の先行き-34も、そのままの数字になるとは限りません。
ただし、だからといって先行きを軽く見てよいわけではありません。というのも、予測と実績の差が4ポイントから2ポイントに縮まっており、実績そのものも3月の-28から9月の-29へと不足の側に動いているからです。
そのため、製造会社のご担当者が先行きの数字を使うときは、数字の大きさよりも、どちらに向かっているかを読むほうが役立ちます。というのも、上の表のとおり数字の大きさは実績とずれますが、先行きは企業が人手の見通しを不足と過剰のどちらの側に見ているかを表しているからです。9月調査の先行きは、すべての規模で9月より不足の側を向いています。
✔ ここがポイント
- 2026年の2回とも、先行きの予測は実績より不足の側に出ていました
- 先行きの数字は、大きさより向かっている方向を読むと、人員を決める判断に使えます
業種別の不足感の動き
同じ製造業でも、雇用人員判断DIの動きは業種によって異なります。そのため弊社は、日本銀行の統計表から製造業の業種別の雇用人員判断DI(全規模合計)を取り出し、6月調査と9月調査で並べて図5にしました。
6月から9月にかけて最も大きく動いたのは、はん用機械です。不足の側に動いた主な業種は、次のとおりです。
- はん用機械:-34から-41へ7ポイント下がりました。中小企業に限ると、-38から-47へと9ポイント下がっています
- 鉄鋼:-29から-35へ6ポイント下がりました
- 生産用機械:-28から-31へ3ポイント下がりました
- 業務用機械:-27から-31へ4ポイント下がりました
- 電気機械と自動車:電気機械は-20から-23へ、自動車は-19から-22へ、3ポイントずつ下がりました
一方で、金属製品は-38から-37へ、食料品は-27から-26へと、ほぼ横ばいでした。ただし、変化が小さい業種でも、人手の不足が和らいだとは限りません。というのも、金属製品の9月の-37は、図5の8業種の中で、はん用機械の-41に次いで不足の側に大きく出ている数字だからです。
このように、同じ製造業でも業種によって不足の強さと変化の向きは違います。そのため、生産管理や総務のご担当者は、日本銀行の統計表で自社の業種の数字を、6月からの変化と9月の水準の両方で見ることが大切です。
統計表には、ここに挙げた以外の業種と、大企業・中堅企業・中小企業の規模別の数字も載っています。そのため、ご担当者は自社の業種と規模に近い数字を選んで見ることができます。
☑ 統計表で自社について見る数字
- 自社の業種の9月調査の数字と、6月調査からの変化
- 自社と同じ規模(大企業・中堅企業・中小企業)の数字
- 12月までの先行きが、9月より不足の側に出ているか
増産期の自社雇用と外部委託
ここまで見たとおり、製造業の人手の不足感はすべての規模で強まっており、業種別でもはん用機械や鉄鋼などで強まっています。そのため、製造会社が生産量の増える期間に合わせて人員を考えるときは、すべてを自社で雇用するか、一部を外部に任せるかを決める必要があります。というのも、人手が足りないと答える企業が増えている中では、増える分まですべて自社で雇用できるとは限らないからです。
弊社は、コーポレートサイトの事業紹介ページで、この判断を図で示しています。というのも、繁忙期に合わせて雇用すると、閑散期にも雇用した人数分の費用が発生するからです。
これに対して、一年を通して必要な分を自社で雇用し、増える分を受託に切り替えれば、増える分の費用は委託した期間と量に応じたものになります。そこで、この考え方を、製造会社が実際に人員を決める順番に置き直したのが図6です。
図6の順番を、製造会社のご担当者が行う作業に置き直すと、次のとおりです。
- 生産管理のご担当者が、一年の生産計画から、業務ごと・月ごとの必要人数を数えます
- 一年を通して必要な人数は、自社で雇用し、自社で教育します
- 生産量が増える期間の増加分は、その業務を自社から切り離し、期間を決めて外部に任せられるかを判断します
- 任せられる業務であれば、外部に任せる業務と期間を決め、請負・準委任・労働者派遣から契約形態を選びます
一方で、外部に任せにくい業務であれば、自社で募集と教育を早めに始めることになります。なぜなら、自社で採用する人は、募集から教育を終えるまでに時間がかかり、遅れて始めると生産量が増える期間に間に合わないからです。
外部に任せるときの契約形態は、請負、準委任、労働者派遣の三つです。三つの契約形態では、受託する会社が引き受けるものと、作業するスタッフに指揮命令を出す側が、次のように違います。
| 契約形態 | 引き受ける |
指揮命令を |
|---|---|---|
| 請負 | 仕事の |
受託者 |
| 準委任 | 業務の |
受託者 |
| 労働者派遣 | 労働力の |
派遣先 |
どの工程にどの契約形態が合うかは、弊社のブログ「工程別に見る請負と派遣の選び分け」で工程ごとに詳しくご説明しています。
■ この章のまとめ
- 一年を通して必要な人数は自社で雇用し、生産量が増える期間の増加分とは分けて考えます
- 増加分は、その業務を自社から切り離せるかどうかで、外部に任せるか自社で採用するかが決まります
相談前に決める三つの項目
製造会社が外部に任せると決めたら、受託先に相談する前に、発注側のご担当者が決めておく項目が三つあります。というのも、受託する側は、業務の範囲と期間が決まって初めて、人の募集と教育の準備に入れるからです。
- 業務の範囲:組立、機械塗装、検査、倉庫業務(入出庫・保管・出荷・搬入)のうち、どの業務を、どこからどこまで任せるのかを決めます
- 期間:生産量が増える期間の始まりと終わりを、生産計画から見込みます
- 契約形態:成果物を定められる業務か、自社で作業者に直接指示したい業務かによって、請負・準委任・労働者派遣のどれが合うかが変わります
また、受託先に支払う単価の決め方も、契約形態によって異なります。最低賃金の改定が請負・準委任・派遣の単価にどう入るかは、弊社のブログ「最低賃金の改定と請負単価」でご説明しています。
弊社の製造請負業では、組立、機械塗装、検査、倉庫業務を承っています。お任せいただく範囲はお客様が業務ごとに決めることができ、弊社は一部の業務だけや、特定の期間だけのご依頼もお受けしています。お任せいただいた業務は、人の募集と教育から日々の運営まで弊社が行いますので、お客様は生産量が増える期間だけ、お任せいただく範囲を広げることができます。
☑ 受託先に相談する前に決めておくこと
- 任せたい業務と、その範囲
- 生産量が増える期間の始まりと終わり
- 成果物を定められるか、自社で直接指示したいか
- 一年を通して自社で雇用する人数
よくある質問
まとめ
このブログでは、日本銀行の短観2026年9月調査から、製造業の雇用人員判断DIを規模別・業種別に読みました。製造業の全規模合計は-29、中小企業は-32で、6月調査からいずれも不足の側に動いています。
同じ3か月で業況判断DIは上がり、設備判断DIも不足の側に動いたため、弊社は、仕事の量に対して人も設備も足りないと感じる製造会社が増えたと読んでいます。そのため、製造会社が生産量の増える期間の人員を決めるときは、一年を通して必要な人数と増える分を分けて考えることが大切です。
■ このブログの要点
- 同じ3か月で業況判断は改善し、設備判断も不足の側に動いたため、仕事の量に対して人も設備も足りないと感じる企業が増えたと読めます
- 先行きの数字は2026年の2回とも実績より不足の側に出ていたため、12月の-34をそのまま受け取る必要はありません
- それでも、すべての規模で先行きが不足の側を向いているため、製造会社は生産量が増える期間の人員を早めに決めておく必要があります
- そのとき製造会社は、一年を通して必要な人数を自社で雇用し、増える分と分けて考えることで、外部に任せる範囲を決められます
☑ 次にすること
- 生産管理や総務のご担当者が、日本銀行の統計表で自社の業種と規模の数字を見ます
- 生産管理のご担当者が、一年の生産計画から、業務ごと・月ごとの必要人数を数えます
増える分を外部に任せることを検討される場合は、製造請負のお問い合わせから弊社にご相談いただけます。
用語解説
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 短観 | 日本銀行の |
| DI | ディフュージョン・ |
| 雇用人員判断DI | 人手が |
| 業況判断DI | 業況が |
| 生産・ |
設備が |
| 先行き | 回答時点から |
| 全規 |
大企業・ |
| 請負 | 仕事の |
| 準委任 | 業務の |
| 労働者派遣 | 派遣元が |
出典一覧
- 日本銀行「短観(概要)―2026年9月― 第210回 全国企業短期経済観測調査」(2026年10月1日) https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2026/tka2609.pdf
- 日本銀行「短観(要旨)(2026年9月)」(2026年10月1日) https://www.boj.or.jp/statistics/tk/yoshi/tk2609.htm
- 日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)(2026年9月調査全容)」統計表(2026年10月1日) https://www.boj.or.jp/statistics/tk/zenyo/2026/all2609.htm
- 日本銀行「「短観(企業短期経済観測調査)」の解説」 https://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/tk/extk.htm











